「らんまん」は明治初期のご時世もあって、物語は主人公万太郎を取り巻く人たちの様々なエピソードがこと細かく描かれる。
万太郎は、日課として植物採集と標本作りが挙げられるがたまたま訪れた池の中に今まで気がつかなかった水棲植物を発見した。
見た感じ根がなくて水にぷかぷか浮いている。
どんなふうに養分を得ているのか光合成だけでは心もとない部分も。
久しぶりに東大の植物学教室に持ち込んでみたところ、あのブラック田邊が反応する。
かつてダーウィンが魅了された食虫植物。
おそらく、その新種なことが予想された。
万太郎は田邊から論文として纏め上げるように指示を受ける。
そして、発表した論文は見事な出来栄え。
実はここにとんでもない落とし穴が隠されていた。
万太郎は、植物学機関誌の表紙に田邊教授の名前を載せていなかった。
今週の最後に描かれたエピソードだったが、この事実はこの当時の様々な人たちのしがらみを象徴していた。
学問的な価値以上に名声が求められていた時代。
万太郎はブラック田邊から植物学教室への出入りを禁止されてしまった。
さて、1週間経った結末は衝撃そのものだったが、万太郎たちは寿恵子や園子と仲睦まじく暮らしている。
さらには週の後半で明らかになったことだが、どうやら2人目の子供もできたような様子。
大きな流れを受けて、物語は来週に続く。
目次
万太郎の日常
今週のエピソードは、万太郎の日常の中からきっかけが始まった。
万太郎は、日々植物採集と標本作り さらには研究と休む間もなく草花に向き合う。
週初めにおゆうさんに頼まれて何人かで引っ越しの手伝いに赴いたのだがそこでとある池のほとりで柳の実を取ろうとした時に池に落ちてしまう。
そこで発見したのが1週間通して描かれたムジナモ。
後になってからこれが大発見だったことがわかった。
そしてその発見は、実は万太郎1人ではたどり着けなかったことも事実。
1週間通して見なければ、なかなか理解しにくいかもしれないが史実のモデルと同じ道筋をたどったことが驚き以外の何物でもなかったと思う。
十徳長屋の仲間たち
十徳長屋ではそこに住む人たちが皆助け合って暮らしている。
万太郎はもちろんのこと寿恵子も園子も仲間として迎え入れられていた。
今週はその中の重要なメンバーであるおゆうと福地の切ないエピソードもたっぷり描かれていたと思う。
彼らは皆子持ち。
万太郎の子育ての様子もよくわかっていて、何かと力になってくれる。
うっすらと恋模様も、描かれたりして物語に花を添えていたのでは。
考えてみれば、長屋で暮らすために印刷所も兼ねた大改造が行われていた。
その時、力を貸してくれたのも彼ら。
万太郎は十徳長屋だからこそ自分自身の植物学者としての書籍も発行することができた。
ここは、万太郎家族にとってはリアルな家族と何ら変わらない存在。
新種発見を目指して
ムジナモが食虫植物であることを見抜いたのは、実は田邊教授。
彼の記憶が参考にならなければ、この食虫植物の研究目標も決められなかったはず。
その意味では、教授は彼自身の役割をきちんと果たしていたような気がする。
彼の豊富な知識によって研究方向をしっかり指示していたわけだから。
しかし、この辺のストーリー展開は実は史実の通りらしくて、研究は見事にまとめられて論文として発表されるが、その発表の仕方でブラック田邊の逆鱗に触れてしまうのだ。
なるほど、万太郎は事実を解明するために全力で研究に没頭した。
明治の頃の学者達と万太郎の立ち位置が根本的に違っていたことがこの時 明らかになる。
当時の一般的な学者たちは名声を求めていたはず。
そのために、研究を誰がやって誰が結果を出したが極めて重要なポイントに。
万太郎は、このときの学会誌に教授の名前を載せていなかった。
実は、これが重大な問題で万太郎はブラック田邊からとんでもない仕打ちを受けることになる。
ブラック田邊の一件
田邊へ教授にはれっきとしたモデルがいる。
矢田部良吉その人である。
実はこの人も植物学博士としていくつかの新種の名付け親にもなっている。
決して、名声を求めるだけの素人ではない。
しかし、当時の牧野富太郎博士とは若干のしがらみがあったことも事実。
さて、らんまんでは学会誌に自分の名前がないことに激怒したブラック田邊。
彼は、なんと万太郎に追放命令を出してしまう。
つまり、二度と教室に出入りしてはいけないと。
教室に出入りできなければ、標本などの検定作業ができなくなってしまう。
万太郎にとっては両手をもがれてしまうようなもの。
今週はここでエピソードが終了した。
来週の予告編はすでに公開されている。
どうやら、さらにドラマチックな展開になりそうな雰囲気。
明治が私たちにとってどんな過去だったのか、今更のように思慕の念が募る。