愛助の病状が順調に回復しつつある。
結核は最終段階に入ったと思われたが、スズ子の献身的な看病が功を奏したのか医者が診察しても、明らかに病状は収まったように見えた。
スズ子は本来自分が果たさなければならない歌うことに向かい合う。
新しく就任したマネージャー山下は公演は厳しい状況が続くが、慰問の形ならばまだ需要はあるとみんなを鼓舞する。
ここへ来て、運命は持ち直すかのように思われた。
しかし、時代は戦争末期。
東京は連日の空襲にさらされて、今や壊滅的な被害を被っている。
スズ子は公演しながらも愛助のことが心配でたまらない。
愛助の側にいたい。
歌を歌わなければならない。
スズ子は葛藤と責任の間でやるせない日々を過ごすしかなかった。
そんな中、静岡での慰問の後京都でも慰問活動。
東京が大空襲で焼け野原になったとの連絡が入る。
この時代、日本は既に自国の領空圏も失いつつあった。
東京はB29の空襲にさらされていたが、当初戦闘機が届かないような上空からの爆撃だったものが、後半は目標を設定しやすいように超低空でやってきたとされる。
既に日本には反撃するだけの力は残っていなかった。
スズ子は東京が爆撃されて大変な状況になったその時も歌手としての活動を止めなかった。
スズ子にとってどうしても果たさなければならない責任。
そんな中上海に渡った羽鳥善一は陸軍から音楽会の企画をするように持ちかけられた。
それは厳しい戦況の中 みんなを鼓舞するために大きなイベントをやってほしい。
羽鳥善一は、上海で蘇州夜曲を作曲することになるがその時の様子も詳しく描かれることになる。
元より、日本を鼓舞するためなんて考えは羽鳥には初めからなかった。
自分がやりたい音楽を存分にやる。
彼の目的はそこ。
東京と上海を舞台にして物語は比較する形で描かれる。
目次
愛助の回復ぶり
この場合、結核が完治したわけではない。
往診に来ていた医者も言っていたが、どうやら収まったらしいのでひとまず安心。
ただし、いつぶり返すかはわからないので注意が必要だと。
スズ子は安心するが、愛助は物語を見ていてもなんとなく甘く見ているような気がしないでもない。
結核は間違いないがうまく収まって何とか普通に暮らせそうだと。
こうしてツーショットで見ていると新婚夫婦そのまま。
スズ子のセリフの中に
今まで生きてきた中でいっちゃん幸せや
言葉にも実感がこもる。
物語の流れを知っている我々はこの幸せが長く続かないことをよく知っている。
運命と言えばそれまでだが残酷な未来だと思う。
新マネージャー山下
この時代、娯楽に関わるものは国の政策としてほぼ推奨される事はなかった。
したがって、普通に公演活動しようにも需要がまるでない。
そのような状況でマネージャーを引き受けた山下は慰問活動なら、福来スズ子の歌を聞きたい人は全国にいるはずだと提案。
新たな発想のもと、公演活動が再開することになった。
今までのような大きな舞台できちんとした会場が確保できるわけではない。
ほとんど公園のようなただの広場の場合がほとんどだったようだ。
上海での羽鳥善一
羽鳥善一は軍からの依頼で、上海がきちんと統制されることを世界にアピールするための音楽会の企画を依頼された。
音楽会の内容については一任するとの事。
善一は自分の好きなようにやらせてもらえることを念押しして確認していた。
もともと日本を鼓舞するような内容など、まるで眼中にない。
自分のやりたい音楽をひたすら追求するだけ。
そしてセリフの中にチラリと語られていたが、既に羽鳥善一レベルでも日本が戦争で明らかに劣性であることが知れ渡っていた。
つまり音楽会はそのような日本を鼓舞するためのもので何とか派手にやってもらえないかとの事。
転んでもただでは起きない善一はお気に入りのジャズを前面に打ち出してくるだろうか。
物語はこれからの流れを見てみないとわからないけど、少なくとも軍の言いなりで軍歌を作曲するようなことではなさそう。
この時、日本国内でひたすら求められるままに軍歌を作曲していたのが古関裕而。
彼はこのころ軍歌の王と呼ばれた。
この頃音楽文学を始めとする芸術活動はかなり盛んだったように思う。
あの時代の戦争がどれだけ多くの人たちの人生を踏みにじってきたか、敵味方に分かれてなどと言うレベルではなく、悲惨以外のなにものでもないと思う。
東京大空襲の惨劇
昭和20年8月に終戦を迎えることになるが、そこに至るまで一体どれぐらいの人たちが犠牲になっただろうか。
スズ子は東京に大勢の知り合いを残してきている。
関西公演で歌を歌っている場合ではないと誰もが進言したが、彼女は持ち前の責任感でステージに立つことを選んだ。
自分の歌を聞きに来てくれる人たちを手ぶらで返すわけにはいかない。
プロ根性と言えばそれまでだが、モデルの笠置シズ子も同じような行動をとったと思われる。
今週の物語の行き着く先は、やはり愛助とスズ子の関係に終始する。
ブギウギではなく、ハラハラドキドキする残りの二日間。