愛助の看病を全力で勤め上げるスズ子。
その甲斐あって愛助はわずかながら回復の兆しを見せる。
しかしながら、それぞれの胸の内は簡単に済む話ではなかった。
愛助は自分の看病のためにスズ子を占領してしまっていることを悔やみ始めている。
スズ子は大歌手でしかも舞台の上に立ってこそ本来の役割を全うすることができる。
対するスズ子は演奏活動ができないことを楽団のメンバーに謝罪しつつも、愛助の世話を焼くことが生きがいに。
しかしそろそろ活動を始めなければ、楽団員を養うためにも仕事を再開させなければならない。
事情を察して何とか手を打たねばと考えた村山興業の坂口は意を決して社長の村山トミに直談判。
メッセンジャー黒田と小雪のやりとりが今のエピソードの1番の見所かも。
特に小雪の、不機嫌な村山トミは女性ながらやり手社長の本領発揮。
坂口の怯えた様子がさらに物語の信憑性を増していたのでは。
福来スズ子のことでんがな😓
あかん😠
この辺のやりとりは何度見ても真に迫ってくる。
詳しくは描かれてはいなかったが、坂口は社長トミの了解を取り付けたようだ。
大変なお手柄だったと言える。
しかし、言づてと称してメッセージを預かったような。
トミはスズ子のマネージャーに村山興業の山下を採用することを許してくれた。
それはスズ子と愛助の交際を認めたわけではない。
愛助の看病を献身的にやってくれたことに対するお礼だからと。
この辺はさすがに商売人。
無条件に許すわけではなく、必要最低限の事だけの持ち出しで済むように巧みな駆け引きを
目次
スズ子の献身愛
病人の看病となれば普通はそばにいて様々な介助等の作業を行う。
スズ子は食事の世話や着替えなど、ありとあらゆることを自分の仕事として行っていた。
自分の最愛の人が困っている。
助けずにはいられない。
あまりにも単純明快な理論。
説明も言い訳も何も必要がない。
スズ子の気持ちがストレートに表現された形だと言える。
それにしても結核患者の横にいつもいる事は感染がこちらに及ぶことも充分考えられる。
結核菌は驚くほどしつこい病原菌だと聞いている。
今でこそ特効薬があるので充分治療は可能だが、この時代特効薬はなく自分自身の免疫力だけが頼みだったようだ。
病気に感染する危険を省みることなく、自らの意思で献身的な愛を捧げる。
周りで見ているものもハラハラしつつ、感心した事は容易に想像できる。
愛助の胸のうち
愛助は自分のせいでスズ子の本来の活動を止めてしまっていることを悔やんでいた。
スズ子はステージの上に立ってこそ本来の値打ちがあるというもの。
自分自身の個人的な都合でスズ子の役割を奪ってしまっている。
そのことが心苦しく、何とかして恩に報いたいと考えた。
2人だけで1日中一緒に過ごすのはこの上もなく嬉しかったがそれはスズ子の貴重な時間を奪っていることになる。
そう思えば切なくて申し訳なくてやり切れない。
スズ子を本来の歌手活動に戻さなければ。
坂口の配慮が導く社長トミの妥協
マネージャー不在のスズ子の楽団は公演活動もままならない。
かつての村山興業の山下ならば充分に務まるはずなのだが。
その事は社長の許しがなければ到底無理。
当初山下のマネージャー就任を却下したのが社長のトミ。
スズ子と愛助の恋愛関係を辞めさせたいと考えていたトミにとって山下のことを許すことにはならない。
坂口とトミの緊張したやりとりが続く。
特にトミの不機嫌そうな演技はは見ているこちらも息が詰まりそうになる。
一代で村山興業を上げた女社長の実力のほどがうかがえると言うもの。
坂口が怯えつつ死に物狂いで訴えていたスズ子のことなど。
場合によっては、坂口の首をはねることぐらいわけないことだっただろう。
トミは坂口の話に耳を傾けスズ子の愛助への検診的な看病に報いることにしたのだ。
その結果が山下のマネージャー就任を認めること。
ただし、2人の関係を認めたわけではないときっぱり。
いかにも大阪商人らしい転んでもただでは起きない巧みな経営手段。
トミにしてみればギリギリの妥協案だったのかもしれない。
それでも、坂口の捨て身の説得がを功を奏したようで、トミからこれ以上ない妥協案を導き出した。
時代背景
この時代スズ子の師匠 羽鳥善一は上海で陸軍付きの音楽活動を命じられていた。
物語の中ではわずかな時間を割いていてその様子も語られている。
モデルとなった服部良一は、中国にわたって蘇州夜曲を作曲している。
NHKの公式発表ではそのことにまつわる配役たちも既に発表。
服部良一は作曲した蘇州夜曲が大好きで、自分が死ぬときにはこの曲をバックに流してほしいと遺言を残したほど。
幸いYouTubeなどで当時の音源も十分に検索可能。
服部良一の作曲家としての並々ならぬ才能を感じる。
ちなみにこれは戦前の話。
さて、スズ子は楽団に新たなマネージャーを迎えることができて、どうやら演奏活動を再開できそうな雰囲気。
この物語の展開から目が離せない。