物語は民法調査室のの法改正案に関わる様々なエピソードが描かれる。
GHQはアメリカ並みの新しい家族の形を盛り込むように指示。
しかし、日本ははるか以前から引き継いできたしきたりを簡単に捨てるわけにはいかなかった。
寅子は調査室の仕事として、様々な関係方面から意見を聞き取る。
昨日物語に登場した神保教授は保守の代表のような人。
急激な変化は国民を不安に陥れるだけだと自分の意見を曲げようとはしない。
対する女性代議士たちの集まりでは、改革派の急先鋒として激しい意見が飛び交う。
様々な意見に接する寅子は、自分自身の意見をしっかり述べることができずに。
寅子の猪爪家では主な男性の家族は皆戦死している。
兄直道、夫優三が戦争で死去。
父直言も既に他界したが、戦争の後遺症で亡くなったようなもの。
残された女性たち家族の気持ちは、自分も含めて未だ悲しみから立ち直れていない。
遺族だと考えれば、軽はずみな発言をする気にはなれなかった。
何よりも寅子は1度法曹界を去った経験が。
自分の最初の気持ちを全うできなかった事実は、寅子にとってどうしても受け入れられない負い目。
歯切れ良く民法改正の意見交換に参加する事は、叶わないと考える。
登場人物たちそれぞれがどのように受け止めどんな未来設計を抱いていたか、物語は強制的に変化を押し付けられたそれぞれの気持ちとしてデリケートに描かれた。
目次
民法改正に関わる様々な意見
戦後まず憲法が制定された。
その後周辺の様々な法律が整備されることになる。
日本が伝統的に受け継いできた家族制度が大きく変わろうとしていた時代。
民法調査室は様々な意見を求めて、日本国民がどうすれば幸せになれるのかを盛んに議論していた。
保守派の代表とされた神保教授は
『急激な変化は、国民に混乱をもたらすだけ』だと、改革には消極的。
GHQは新しい日本の法律を制定するためには、アメリカ流のやり方が1番だと考えたようだ。
アメリカは基本的に個人主義の国。
個人のプライバシーが尊重される。
ただし、それが優れているとは決して言えないのも事実。
それぞれのお国柄で伝統的に受け継がれてきたことの中にこそ、求める回答があるのかもしれない。
穂高教授や花岡との再会
様々な意見を聞きながら毎日司法省で仕事をする寅子。
思いがけない人たちとも再会することになる。
今日描かれたのは穂高教授とのやりとり。
寅子が妊娠を告白したときに「仕事なんかしている場合じゃない、子育てに専念するように」と意見を述べていた。
この時のやりとりが元で寅子は弁護士事務所に退職届を提出。
一旦は法曹界を去ることになった。
このやりとりは物語の上でもとても重要。
1度仕事を離れたことが、寅子の中ではどうしても受け入れられない負い目となって心に残っている。
戦争で亡くなることの意味
この時代の日本で戦争が原因で亡くなった人が310万人。
そのうち徴兵など軍関係で亡くなった人が230万人。
特に戦争後半になると、日本の国内はアメリカ軍の空襲にさらされることになった。
何万人もの人々が一晩のうちに死んでしまう。
家族全員が亡くなる場合も当然あっただろう。
しかし、残った人たちもかなり多かったようだ。
日本人はおしなべて、全員が戦争遺族のようなもの。
寅子はその代表のように思われる。
寅子もそうだが、花江の夫直道は南方方面で戦死している。
花江は夫の命を奪った敵国の人間と仲良く仕事をしている寅子に違和感を。
戦争に負けたことの意味は周りのものがとやかく言えるほど生易しいものではない。
花江の気持ちは寅子にとっても辛く重いもの。
寅子が抱く違和感
戦後女性の代議士たちは割合で行くと、8.4%ほどの人員だったと聞いた。
現在が9.2%ほどなので、男性代議士に対する女性の割合はほぼ変わっていないと言える。
世の中が進化することがどれほど大変なことなのか、数字にもよく現れているのでは。
今日描かれた物語の中で、傷痍軍人の様子が。
今からおよそ半世紀ほど前、私自身も東京新宿の西口で2人セットで軍歌を歌っていた傷痍軍人を見かけたことが。
彼らは目の前に小さな箱を置いて、道行く人たちからお金を投げ入れてもらっていた。
この頃戦争が終わって30年ぐらいは経っていたと思うが、個人的に戦争中の記憶は私の中には全く受け継がれるものはなかった。
街中でこんな景色を見せつけられると、戦争はまだ終わっていないと納得した記憶が蘇る。
私が見た彼らは1人は四つん這いで手足が不自由だったように記憶する。
後ろに立っていた人がアコーディオンを弾きながら軍歌を歌っていたと思う。
虎に翼の作者は女性でまだかなり若い印象。
吉田さんは綿密に下調べをしているに違いない。
戦争中の細かいエピソードなど、様々な出来事を丁寧に拾い上げている。
今週のストーリーは今日1番の広がりを見せたはず。
週の最後にどんな落としどころが待ち受けているんだろう。