ユダヤ出身のバイオリニスト
目次
こちらの方、歴史的にも有名なバイオリニストです。
その名もアイザックスターン
森繁さんとアイザックスターンがどうしてお知り合いなのか?
森繁さんとの縁
ちなみにアイザックさんはユダヤ人なんですね。
そして森繁さんには世界的に有名な舞台がありました。
そうです。屋根の上のバイオリン弾き
ユダヤの家族の生活を描いた有名なミュージカル。
森繁さんは主人公、テヴィエ役で一躍有名。
アイザックスターンが森繁さんのこの舞台を見染めてそこから2人の関係が始まったのです。
森繁久彌 感動のカ-テンコ-ル! ~707回目の屋根の上のウ゛アイオリン弾き~ 1982
2人のエピソードを知ったのは今からおよそ45年ほど前のNHKのインタビュー番組でした。
はるか昔のテレビ番組のこと
森繁久弥さんがアイザックスターンとの馴れ初めについて語っていたことに由来します。
アイザックは舞台を見て涙を流して感動したのだそう。
森繁久弥の演技はまさにユダヤ人そのものだと受け止めたようなのです。
ユダヤ人とはこういうものなのだという迫真の演技。
舞台は日本語で行われたはずなので、アイザックが日本語をどの程度理解したかは定かでは無いのですが、彼は森繁久弥の楽屋にまで押し掛けて抱きついて感動を伝えたようなんです。
森繁さんはこのような西洋人らしいアイザックの振る舞いに、最初は著しい嫌悪感を催したと、そう述べておりました。
驚くほどの感激屋さん
抱きついていきなりキスをしたんだそう。
森繁さん曰く ゲイか何かのおかしな輩が、目の前に現れたんだろうとそう思ったらしいですね。
しかしながら後から話をしっかり聞いてみると彼は世界的に有名なバイオリニスト。
アイザックスターン
彼が操る楽器はガルネリ。ストラディバリと並び称せられるバイオリンの中の最高級品。
おそらく世界に何台もない名器中の名器。
Isaac Stern playing Bach's Chaconne in D minor for solo violin Single File
あまりに有名なバッハの無伴奏曲。
聞いてみてわかるのは、力強さと同時に驚くほどの繊細さ。その両方が全く違和感なく同時に存在するその不思議さ。
バッハの音楽の特徴の1つに、絶対に他者におもねることをしない頑固さがあるのですが、そのバッハ感がいかんなく発揮されている演奏でしょう。
森繁久弥が語ったアイザックスターン
最初の出会いから何度か話をするうちにすっかり打ち解けた森繁さんとアイザック。
一緒に食事をしたり歓談をしたりの穏やかな関係に。
ある時に森繁さんが次に会うときの約束の時間を問い合わせてみたところ、いつもは2つ返事でオーケーのアイザックが、その時間だけはちょっと無理なんですと言うこと。
音楽にかける並々ならぬ情熱
理由は、ちょうど自分がトレーニングをしなければいけない時間なんだそうで。
自分自身が納得できるだけの努力。それがアイザックが自分自身に課していたノルマなんだそうです。
どのように演奏すれば最もふさわしい演奏になるのか、そのことをいつもギリギリまで思案し、納得のいくまで弾き込む。
そして試行錯誤の果てに最もふさわしいと思われる結論を1つ導き出すんだそうですよ。
それがステージ上の演奏ということに。
ステージでは一切迷いなく自分がトレーニングしたベストのものを披露する。
それは自分自身にとっても聞き手の側にとっても極めてシンプルなものです。
森繁さんそう申しておりましたね。
アイザックのこのような音楽に対する姿勢を随分と高く評価しておられました。
まとめ
あなたのためになら、眠りにつくまでの間何時間でもバイオリンを弾き続けますよ。
アイザックスターンが森繁久弥のために語った言葉だそうです。
思うに自分自身が心から感動したものに対して、最大限の敬意を払う。
そのことがこの言葉の中に如実に表れている気がして。
長く私の記憶に残った心温まるエピソードでした。