つい昨日終わったばかりの世界選手権
目次
実に見事に並んだロシア出身の3人の選手たち。
昨日終わった世界選手権の結果は、やはり実力者が上位を独占する形になった。
表彰台こそ逃したが、日本人選手3名も非常に優れた活躍をしたのである。
この選手たちに共通する特徴がある。
自分自身の体をストイックなまでにコントロールすること。
彼女たちは皆10代の少女である。フィギアスケートの競技の性質上、厳しく体重管理が求められるのである。
それゆえに食事制限は過酷を極める。
今日、このようにテレビや新聞で紹介される選手たちは皆この厳しい状況を乗り越えて今があるわけだ。
あまりの厳しい食事制限ゆえに、摂食障害を起こして競技をリタイヤする選手もいる位である。
実は体重の管理の厳しさは、育ち盛りの少女にしてみればほとんど拷問に近いものがある。彼女たちは、無論男子もほぼ同じなのだが、体重が500グラム増えるとジャンプは飛べないと言われる。
当然食事をするわけだから、普通の人ならば食事を1回たらふく食べたならば2キロ位太るだろう。フィギアスケートの選手には絶対に許されない事柄である。
厳しく制限するゆえに、淡水下物を夕方の食事で取る選手はほぼいないだろう。
彼女たちの体脂肪率は10%以下。日本人の3選手は皆6%と聞く。
この体脂肪率はボクサーや、その他の研ぎ澄まされた競技の選手たちと全く変わらない。
女子のフィギアスケートは見ている限りにおいてはとても優雅で可愛らしいが、その裏での過酷なトレーニングを思うと気の毒な気持ちにさえなってしまうのだ。
女子スケーターの熱い戦い
このコマ送りの画像は羽生結弦選手の4回転サルコウの飛んでいる姿である。
サルコウジャンプは 比較的難度の低いジャンプと言われているが、それでも4回転となれば全く別次元と言えるだろう。
男子でさえ、誰彼扱える代物ではないと聞く。
しかし女子の世界でも、このジャンプをこなす選手が少しずつ出てきてるのである。
紀平梨花のトリプルアクセルもとても有名ではあるが、4回転ジャンプはそれ以上である事は言うまでもない。
おそらくはこの1年2年の間に女子選手も4回転ジャンプをこなす時代がやってくるだろう。
どうしても採点基準などを考えると、ジャンプを上手に飛べなければこの競技は戦えないのだ。
私がこの競技を知った今から50年前、札幌オリンピックの時は女子はダブルアクセルが1番難しいジャンプだったと記憶している。
男子ではやっとトリプルサルコウが目玉の技になりつつある頃だった。
今では女子の全ての選手がトリプルアクセル以外の3回転ジャンプは軽々とこなす時代だ。
ジャンプだけではなく、ステップシークエンスやスピンも驚くほどの進化を遂げている。
これらをこなしていく選手たちのレベルは格段に上がっている。
参考までに言えば羽生結弦は今後のジャンプの課題として4回転アクセルを練習し始めているようだ。
いったいどこまで進化をするのか、先の事は楽しみでもあり、大丈夫かなとの不安な気持ちがつきまとうこともある。
エフゲーニャメドベージェワ
彼女は競技の練習拠点をロシアからカナダに移す大きな決断をしたのである。
カナダに行ってからは想像を絶する苦労をしたようだ。故郷のロシアを離れたことで彼女自身のTwitterには“裏切り者”の投稿さえあったようだ。
またスケートを根本から見直すにあたり、自分自身の体型を含めた総合的な見直しを行ったと聞く。それはびっくりすることだが体重を5キロほど増やしたらしい。
彼女は全盛期の頃は、といっても今からほんの2年前ほどのことだが、体重43キロでずっとやってきた。しかしこの体重を維持するための食事は必要な栄養素が足りていなかったせいか骨折などのトラブルに長く悩まされ、かなり厳しい思いをしたようだ。
きちんとした体作りをするためには栄養が体にしっかりと回ることを考え、そうしたトレーニングを積んだところが5キロ増の結果だったようだ。
当然のことだが体のバランスは大きく崩れ、特にジャンプ等はほとんど飛べなくなったと聞く。
そこから死に物狂いの努力で体の全体のバランスをもう一度構築して今の体に作り上げてきたのである。
今回の銅メダルはそうした意味で彼女にとっては絶対に必要だったメダルのようだ。
苦しい期間がほぼ1年以上も続いたゆえに、この辺で結果を出さなければロシア代表の座も危うくなるギリギリのところにいたわけだ。
今回の世界選手権では困難を乗り越えて見事に復活してきたのである。
アリーナザギトワ
ザギトワ選手の苦労も並大抵のものではなかったと聞いている。
実は彼女はまだ16歳の選手である。当たり前のことだが成長期にある普通の女の子なわけだ。平昌オリンピックが終わってから身長が5センチほど伸びたのだそう。
そうなると当然のことながらジャンプなどのバランスが大きく狂ってくる。
公開はしていないが体重も同じ体重ではいられなかったはず。体の見かけの肉付きがそれほど変わっていないので、おそらくはメドベージェワと同じく 5キロ位は増えたのではないか。
彼女もオリンピック後は苦しみ抜いた1人と言える。
長く結果が出なくて非常に辛い思いをしていたようだ。
女子の選手では、どうしても成長期のバランスが崩れるあたりを上手に乗り越えていかないとフィギアスケーターとしてやっていけなくなると言われている。
食べ盛りのこの時期に食べたいものが食べられなく、しかも体は成長期なので容赦なく大きくなっていく。
個人差もあるが、身長が160センチを超えてくるような選手だと、競技を継続するにはかなりの体力的な下支えが必要になっていく。
苦労はしてもザギトワ選手はこの大きな変化を気力で乗り切り、今回大きな成果につながったと言える。
エリザベートトゥルシンバエワ
トゥルシンバエワはカザフスタンの選手であるが、現在19歳。
彼女の持ち味はなんといってもシニア選手で初めて成功させた4回転サルコウの使い手。
女子でこの技を競技の中で繰り出せる選手はそうザラにはいない。
この選手と、ジュニアの選手の中に(すべてロシアの選手)女子でいながら4回転ジャンプを跳ぶ子たちがいる。
これらの女子選手のコーチがテレビでも時々見かける金髪の女性トゥーベリーゼ女史ある。
彼女が指導する選手は、皆競技会で良い成績を残し、また世界的な知名度も極めて高いのである。
トゥルシンバエワは実は彼女はもう19歳で、体の成長のことを心配する必要がないと聞いている。
小柄な子だなとは思うが、この体型を存分に活かして高度なジャンプを次々とこなす特徴がある。
彼女以外に4回転を飛ぶ子たちは今まだ14歳ほど。ジュニアの選手なのだ。
次のオリンピックではこのジュニアの子たちが必ず表舞台に出てくるはず。
もちろん楽しみではあるのだが、女子のフィギアスケートが一体どこに行き着くのか不安を感じないわけでもない。
紀平梨花 坂本花織 宮原知子
日本のこちらの3人娘達も世界のトップレベルの実力者たちである。
当然のことながらストイックに自分の体を管理し、同様にトレーニングをこなす。
体脂肪率6%の非常に研ぎ澄まされた肉体を武器としている。
この中で紀平梨花はトリプルアクセルを必殺技としている。
彼女の目標の中では、ショートプログラムでいちど、フリーの演技では二度とこの技を入れる事を旨としているようだ。
この大技もたやすく出来るような簡単な代物ではない。
4回転ジャンプと並んでこれから数年後には女子選手たちは皆これらの大技に取り組むことになるのではないか。
女子はトリプルアクセル、男子はクワトロアクセル。
とんでもない時代に突入してきているのだ。
まとめ
男子も含めて1部の選手が記念写真を撮ってもこれだけの選手がすぐに集まるあたり日本人のフィギアスケートの層の厚さを感じる。
ストイックに頑張る選手たちがこれだけいれば、競技もいやがおうでも盛り上がるというもの。
この競技はどうしても競い合うことを目標としている部分があって、人間関係自体がとてもデリケートな世界であることも事実。
友達でいてもライバルである可能性が。
また技術と表現力に関して言えば、日進月歩のところがあり、古い世界にそのまま止まれば競技大会で良い成績を残すことなどできないのだ。
私など見ていて、まだ10代の少女たちがそんなに体をストイックにいじめて大丈夫なのかと不安な気持ちを抱いてしまう。
いろいろと調べてみると摂食障害を始め様々な病気を発症して、競技から離れている人たちもとても多いと聞くからだ。
しかしこの競技の持つ、洗練された美しさ優雅さは他に比べるものがないとも言える。
体を壊さない程度に、毎日努力を重ねてほしいと願うのである。