現在放送中の 朝ドラ“なつぞら”を放送する前に再放送のおしんがある。
BS放送なので、続けてやっている関係で毎回必ず見ることに。
一旦見始めると、やっぱり はまってしまう。
今現在は大正時代から昭和にかけての佐賀県でのエピソード。
これがなんとも凄まじい内容で、視聴者からの反響もすごかったらしい。
目次
佐賀県での田倉家での苦労
実は今放送しているのが、全体の物語の半分ぐらいのところで九州の佐賀の夫の実家に戻った頃のエピソード。
ここでのエピソードの特徴は、ひたすら姑さんにいびり続けられること。
毎日 野良仕事やら、その他やること成すことにケチをつけられ、果ては追い出されかねないような状況にも。
たまりかねたおしんは佐賀を抜け出そうと計画するのだが失敗。
その失敗のときのエピソードで右腕などに大怪我を追って、右手が使えないようになってしまうのだ。
さらにその時に 2番目の子供を妊娠していることを自覚するのだ。
今日までの放送では、その2番目の子供を1人で出産はしたものの、その後の手当てがうまくいかなく子供は亡くなってしまい、呆然自失する中で同時期に生まれた夫の妹の子供に、頼まれて授乳をする。
その辺の様子が様々な人間関係と共に描かれていた。
佐賀の実家で実権を握っているのは姑のお清さん。
彼女が右と言えば右、左と言えば左になってしまうそのような家庭環境。
長男夫婦もいるのだが、ほとんど発言するようなこともなく、黙々と働いているばかり。
おしんの物語ではこのエピソードにたどり着くまでに様々な苦労をして、生き抜いてきた様が描かれている。
出会った夫、田倉竜三は気立てがよくて優しい部分もあるが、何せおぼっちゃま。
叩かれてもまれて苦労した経験などあるはずもなく、問題に直面した時も思ったほどの力にはなれていない。
設定上そうなっているので、いかんしがたい。
ずっと続けて見続けているのだが、おしんはとにかく半端でなくいじめられる。
ある意味情け容赦のない拷問のようなもの。
それでも毎朝見続けてしまうのは、仇みたいな人ばかりではなく 味方になってくれる人の思いやりなども巧みに織り交ぜて描かれているので、しかも、おしん自身の健気な頑張りもあって物語が進んでいくので。
そうすると、どうしても次はどうなるんだろう?と。
女優田中裕子の底知れぬ実力
この作品は田中裕子が29歳の時の1番脂が乗り切っていた頃の作品。
感情を激高させるシーンとか、抑制するシーンなど物語のストーリーに合わせて自由自在に演じていたなと。
また役柄に応じてキャラクターを変えることができる器用さも持ち合わせていて、女優とはこうしたものだとつくづく感じいる。
特に自分の子供を失って錯乱するシーン。
その後うつろな表情で過ごすのだが、実際はきちんと覚醒していて事情を飲み込めていたことを後でひっそりと告白するところなど。
この役柄を演じるためにいるのだと言わんばかりの自信に溢れた演技。
彼女はこの当時、売れっ子の俳優で様々な役柄を演じていたが、裸も全くいとわない演技は見る者をして作品にのめり込ませて行った。
しかし、放送自体が1年間に及ぶ長丁場で、体力的にも相当きつかったと思うのだが、撮影風景の様々なニュースを見てみると姑さんのあの仇とも言える高森さんとも仲良く歓談するところが写真に撮られていて、撮影現場はとてもなごやかだったんだなと改めて認識する。
女優田中裕子にしても、彼女を代表する作品と言えるだろう。
お清を演じた高森和子さん


高森さんを調べてみて気づいたのだが彼女は私の母親と同じ昭和7年生まれ。
お清さんを演じた時が51歳。
若い頃から女優として活躍してきたが、最近はエッセイストに転身して文章を書く仕事をしているようだ。
彼女のお清さんがあまりに迫真の演技で、佐賀県の役所には抗議の電話が殺到したんだそう。
佐賀県の印象が悪くなる!
そういった苦情が鳴り止まなかったらしい。
また、極めつけだが彼女が佐賀県で仕事で入ったときに、周りから憎しみのこもった目で睨みつけられたり、ひどい時は石が飛んできたこともあったと記述にはあった。
どこまで本当だったかわからないが、嫌がらせのようなこともあったと思うに至るような迫真の演技だったと思う。
とにかく彼女の演技を見ていて“なんて憎たらしい姑なんだろう”と誰もが思う。
脚本通りの演技をしているので、彼女には何の責任もないのだが、ドラマの中の登場人物に憎しみをぶつけてしまう位、見ている人たちはそれだけ感情移入していた。
女優としての彼女の底力を別な意味できちんと証明してみせている。
先にも書いたが、撮影現場では主役の田中裕子とにこやかに歓談をしてお茶を飲んだりしていたようだ。
これだけ苦情が集まるところを見ると別の見方をすれば女優冥利に尽きると言うもの。
話は全く別なことになるが“スタートレック”と言う番組がある。
もちろん映画にもなったとても有名な作品だがその中に“ミスタースポック”と言う宇宙人が出てくるの知っているだろうか。
彼は俳優レナード・ニモイが演じていたのだが、彼はミスタースポックそのものと周りから信じられていて、普段の生活がやりにくかったようなのだ。
そのせいでわざわざ本を書いている。
「アイアム ノット スポック 」
私はスポックじゃないよ。
彼と似たような経験を様々な俳優が経験しているようだ。
“スター・ウォーズ”の“オビワンケノビ”を演じた“ユアン・マクレガー”も人に話しかけられたときに彼のことをオビワンと信じている人が多くてちょっと困ったと言っていた。
作品の中での存在感がそれだけ確かなものだったことの証拠と言える。
今、朝ドラでやっている“なつぞら”も同じようなことが起こっているのかもしれない。
橋田寿賀子が1年間執筆した渾身の物語
脚本家の橋田寿賀子は日本の脚本家の中でも重鎮中の重鎮と言える。
作品おしんの知名度は日本国内に留まらない。
日本以外の外国でも大人気なのだ。
これだけの作品を書き上げるその情熱は大変なもの。
取材をきっちりと行って、そこから様々なエピソードを作り上げる。
彼女のひたむきな努力はまさに賞賛に値する。
90歳を超えた今でも創作意欲が衰える事は全くなく、今でもレギュラー番組を持っているようだ。
普段、彼女の身の回りは同居している書生たちがしているようだが、たまにテレビの特集番組などで紹介されているので俳優たちと同時にテレビ出演することも。
お年を考えると、あとどのくらいとかどうしても思ってしまうが、瀬戸内寂聴さん同様 長生きして大いに活躍してほしいものだ。
彼女の残した作品は大勢の人を励まし、勇気づけて今も輝いているのだから。