福島三羽ガラスにとってその出発点となるのはやっぱり故郷福島。
彼ら3人の恩師である藤堂先生の出征。
それこそがこの暁に祈るの原点になる設定。
最後まで愛馬精神にいまひとつ踏み込めなかった鉄男君だが、藤堂先生の出征には激しく反応。
出征していく兵士とその家族の心に寄り添えばおのずと何を描けば良いのか彼の持つデリケートでナイーブな感性は優れた作品を生み出すことに。
そしてとうとう暁に祈るは依頼者陸軍のオーケーを取り付ける。
目次
完成 暁に祈る
正直な気持ちを打ち明ける鉄男君。
私は今まで出征兵士の気持ちに寄り添いてはいなかった。
そんな事は考えてもみなかったけれど、今回恩師が妻子を残して戦場へ赴くことになって、初めてそれぞれの気持ちを考えたときに私なりにこの詩を書いてみた。
陸軍の責任者は多少感傷的ではあるが、祖国を思い命を捨てて戦いに赴く兵士にしっかりと寄り添っている。
これでいきましょう!
名作暁に祈るが完成した瞬間。
もちろんメロディーは祐一君。
歌唱は久志君。
福島三羽ガラスの足並みが揃った瞬間でもあるのだ。
芸術活動もどれだけ思い描いた世界に自分が肉迫できるか。
通りいっぺんで片付けようとしてもそんなうまくいくはずもないわけだ。
出征兵士を送り出すセレモニー
久志君が歌う暁に祈るを背景に今まさに出征しようとする藤堂先生。
万感の思いを込めて妻や子供に目線を送る。
目に涙をいっぱいためて見送る息子。
そして涙をこらえることができない昌子さん。
命がけで行くわけだから生きて帰ってこれる可能性は良くて五分五分だろうか。
この頃、出征兵士を送るセレモニーのときには暁に祈るないしは露営の歌が歌われたと聞く。
この古関裕而は軍歌の覇王と呼ばれた。
ちなみにエールの中では祐一君を愛国歌謡の覇王と呼び名を変えていたね。
そんなことしなくても、軍歌の覇王でいいじゃないかと私など思ってしまうが、ひょっとしたら誰かに気を遣って呼び名を変えた可能性もあるし、あるいはあくまでもフィクションの物語なので物語風に呼び名を変えた可能性もある。
しかし、使っている曲はオリジナルそのもの。
そのことでどんな呼び名にしようとも、当時の人たちの胸の内は10分過ぎるくらい伝わってくると私自身は感じ入っている。
暁に祈る レコーディング
名作暁に祈るは当時のレコーディング風景そのままに撮影されている。
今のような編集技術があるわけではないので、バックのオーケストラも歌手も一発どりで録音していたようだ。
指揮棒を振っていたのは祐一君。
モデル古関裕而さんも後年、テレビで指揮棒を振っている姿が多く見られた。
誰に習ったわけでもない自己流だが、全く違和感なく映っていたような気が。
またこれも独学だろうがオルガンなどの鍵盤楽器も自在にこなしていた。
正直言って作曲家古関裕而は天才の部類に入る作曲家だろう。
しかし、彼の場合明らかに職業作曲家と言える。
つまり依頼主からお願いされて依頼に見合った作曲をする、行って見れば職人のような意味合いを持っていたのでは。
依頼内容をとにかくしっかりと受け止めてふさわしい曲作りを心がける。
彼自身が自分だけの思いで作った曲はむしろ少なかったかもしれない。
必ず、モチーフとなる詞だったり、応援だったりイベントだったりが存在していたね。
音ちゃんの音楽教室
音ちゃんの音楽教室は順調に開催されているようだ。
弘哉君の発案で発表会をすることになったようだ。
音楽をやっている人にとって励みになるのが人前で披露すること。
どうやら久しぶりに音ちゃんもみんなの前で歌を歌うことになりそうだ。
モデルとなった古関金子さんも声楽家としての活動もしていたようだ。
彼女の歌声もレコードとして残っているので。
よく響くソプラノだと思う。
時代は太平洋戦争の真珠湾攻撃の始まる直前として描かれていた。
つらく苦しい時代はまさに今これから始まると言ってよかったのだ。