恐れていたことだがとうとう鶴亀家庭劇は解散することに。
大山社長の鶴の一声と言えばそれまでだが、戦局が厳しくなる中、いよいよ喜劇を上演するどころではなくなってきていた。
ほとんどお客さんが入らない中では、興行をやればやるほど赤字になる始末。
はっきり言えば背に腹は変えられないとの事。
経営者としては苦渋の決断をするしかないのだ。
昨日の放送の中で大山社長が1人涙するシーンが描かれていた。
家庭劇のメンバーにもその衝撃の事実は否応なく突きつけられる。
目次
千代ちゃんのゆずれない意地
一平君は劇団員や千代ちゃんに気を遣ってなかなか言い出せなかったそうな。
しかし、彼はちょっと前に大山社長から厳しい現実を言い渡されていた。
家庭劇で演ずる側とすれば、石にかじりついてでも続けたい気持ちなのは山々。
しかし、現実を考えてみれば毎日のように繰り返される空襲の隙間をぬって、さらに地方での興行が増えているのでその移動にも気を使う。
それぞれ睡眠不足やストレスとですっかり疲弊する中、これ以上続けることに疑問が湧いてきてもしょうがない。
お客さんがほぼいない状態にまで落ち込んでいるので、誰も見る人がいないのに苦労して演ずる意味があるのかなってこと。
社長は経営者の立場からこのまま存続する事はお互いの為に良くないと判断。
ここはご時世を反映して潔く撤退すべきだと決めたようだ。
ミツエちゃんの啖呵
厳しいご時世の一端が描かれていたね。
この時代国民全体に呼びかけられたのが金属の供出。
日本は物資が全ての面で不足していたので、再利用する意味で各家庭にあった様々な金属製品、実はこういったものはお寺の釣鐘に至るまで全てかき集められた。
それは大砲や機関銃の弾になったり、それ以外の兵器にもずいぶん転用されたようだ。
ただし、一生懸命集めたところでたかが知れている。
物語の中の福富では婦人会がやってきて、
福助君が所有しているトランペットを供出せよと言い寄られる事態が。
実はこのトランペットだけは絶対に守り切らなければならない福富の思いとも言うべき存在。
福助君が愛してやまなかった分身のようなもの。
今日のドラマの見せ場が実はここにあった。
ミツエちゃんが福富にやってきた婦人部のおばちゃんたちを相手に、大ミエを切って追い返したのだ。
もう家には出せる鍋も包丁もあらへん
それでももっていくのやったらウチをこの包丁で刺し殺してからにしてくれへんか
その凄まじい気迫はトランペットや家族も守ることになった。
今日の物語の中では千代ちゃんの絶叫するシーンもなかなかだったけど、このミツエちゃんの夫婦愛の啖呵が一番だったかもしれない。
見ていてスッキリしたもの。
1人でも続ける鶴亀家庭劇
一平君と千代ちゃんの激しいやりとり。
もう あかんのや‼️
いやや、絶対に止めとうない😭
そして大山社長のところに直談判に行こうとさえしている。
それを必死で止める一平君。
2人の激しいやりとりを見て団員たちが逆に気を使う有様。
皆そろそろ疎開しなければと思っているようなそんなことを発言しつつ、メンバーが少しずつ欠けていくように。
それでも引き下がらない千代ちゃん。
一平君を捕まえて
あんたと寛治がいてれば3人でできると。
それすらも難色を示されると
ウチ 1人でやる
千代ちゃんにしてみれば絶対にゆずれない一線がここにあったようだ。
今まで生きてきた中で様々なものを失ってきた千代ちゃん。
女優を続けることこそが最後に残った彼女の砦だった。
それすらも取り上げられるなんて絶対に承服できない。
その思いで渾身の力を尽くして頑張ろうと努力。
苦しい時代を生きようとする人たちの1つの形がここで示されていたような。
この後、大阪は八回にも上るB29の大空襲を受ける。
このときの大阪の荒野原の様子が写真でもずいぶん確認できているが、道頓堀も焼け野原になってしまう。
昨日のブログでも書いたが15000人ほどの犠牲者が出たと聞く。
とにかく容赦のない焼夷弾が雨あられと降ってきたのだ。
確かにそんな時代で娯楽なんて事はとてもじゃないが常識からかけ離れていただろう。
しかし、そこに所属していた当事者たちにしてみればそれが生きる糧であったことも事実。
実際戦争が終わった直後から日本はラジオ放送や様々な演劇に関する活動がなされることになる。
私たちのご先祖たちが苦労されたことだが、文化芸術はご時世が悪いからといっても簡単に消えてなくなるものではなさそうだ。