フォーレのレクイエムを初めて聞いたのは高校受験を間近に控えた中学3年の冬だったと記憶。
その頃すでにクラシック音楽のファンになっていた私は様々な西洋音楽から新しい作品に触れることが楽しみの1つになっていたと思う。
思えば、中学1年の時音楽の時間に先生から簡単なテストが全員に。
それは生徒たちがどれだけ童謡を知っているか。
要するに、様々なレコードをかけてその曲名を当てるクイズのようなもの。
今でもはっきり覚えているがおよそ20曲ほど聞かされたと思う。
ちなみに、その時私は1曲もわからなかった。
テストを受けて全く答えられないことなど経験したことがなかった私は、何とかして様々な音楽に触れるべく手を打ったのだが、それが当時NHKの教育テレビでやっていたNHKコンサートホール。
夜11時からの遅い番組だったが、司会が当時著名な評論家だった大木正興さん。
わたし的には音楽の見聞を広げるつもりの勉強のつもりが出発だったが、1年2年と番組を見るにつけ、ミイラ取りがミイラになるが如く、クラシック音楽の素晴らしさに開眼していくことに。
その最後の方で初めて聞いたのがフォーレのレクイエム。
宗教音楽のスタイルをとっていながら、宗教音楽っぽく聞こえないところが、斬新でとても魅力的に思えたもの。
目次
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作曲家ガブリエルフォーレ
フォーレは19世紀から20世紀にかけてのフランスの音楽家。
有名なところでは彼はサロン音楽の作曲家として知られるところ。
これは当時のサロンで愛好されたことに理由がある。
クラシック音楽の愛好家にしてみると、サロンで愛される音楽はどちらかと言えばつまらないものと言う印象を抱く場合が多いのでは。
したがってフォーレも正直なところ評価がその辺で損をしている部分があるかもしれない。
しかし、音楽家としての実績はかなりなもの。
作曲家として彼が活躍する時代はちょうど、リストやワーグナーといったロマン派後期の作曲家の後を継ぐ時代。
当然のことながらその影響は大きく受けただろうが、しかしリスト的とかワーグナー的といった印象は受けないよね。
フォーレの音楽は、斬新な先進的な技法を用いながらも、全体的なバランスはむしろ古典的なのだ。
私の印象としてはブラームスとか、シューマンといった作曲家に近いものを感じる。
特に活躍し始めた最初の頃は華々しく劇的な音楽形態をとることが多かったが、中年以降のレクイエムに代表される作品群はどれも内省的。
おそらくこの辺の作品からフォーレをお気に入りにする人たちが増えたのではと思う。
彼自身音楽家として活躍するのに先生としての一面も挙げられるだろう。
彼の弟子で有名な作曲家と言えばモーリスラベルが挙げられる。
20世紀のクラシック音楽の最高峰と言われるボレロの作曲者だ。
宗教音楽の側で実績を残したフォーレだが、実はこの時代の他の芸術家同様、女性関係では浮き名を流している。
この時代で有名な女癖の悪い作曲家と言えば多分ドビッシーが真っ先に挙げられるだろうが、フォーレもドビッシーほどでは無いにしても、女性遍歴の記述が多い。
レクイエムらしからぬ宗教音楽
レクイエムと名前がついているのでに翻訳では鎮魂歌と訳される。
つまり死者へのお弔いの気持ちが曲に込められることになる。
フォーレの場合1887年に父親をなくし、89年に母親をなくした。
この曲は亡き父親へ捧げる形で作曲されたと聞いている。
宗教音楽なので、きちんと歌詞がついているが、ラテン語で書かれている。
実は、私が初めて知った宗教音楽のレクイエムがフォーレだったので、レクイエムとはみんなこうしたものなんだろうなと勝手に想像していたが、実はモーツアルトやヴェルディといった作曲家の作品と比べると、やや趣が異なるような。
専門家ではないので詳しくは語られないが、この曲は死者をお弔いする苦しい胸の内を表現しているわけではない。
この曲は死者の安楽を願って止まないのだ。
せっかくなので、ここに全曲を紹介してみたいと思う。
全曲載っているので41分かかるとなっている。
実際はYouTubeまでサイトをまたがなければならないが、YouTubeで見るボタンを押せばそのまま聴くことができる。
中学生や高校生が聞いて理解できるような曲ではないと思うが、当時の私はこの曲にいたく感動したんだろうと。
フォーレのレクイエムの魅力
この曲の魅力を1つ挙げるとすればそれは極めて内省的に描かれていること。
平たく言えば心に染みいってくるのだ。
そして、全曲を聞けばわかるのだが、曲の冒頭が荘厳で厳かな響きに対して中間では自分自身の心の中の苦しみが描かれていて、最後に福音がやってくるのだ。
フォーレ自身が語っている言葉で、これは安らかで穏やかに眠る故人への賛歌なのだと。
曲は19世紀中に作曲されたが何度か演奏するうちにマイナーチェンジを繰り返して実際は20世紀に入ってから現在の形に整えられたと聞く。
実は、YouTubeのこの曲へのコメントでいくつかなるほどと思うものが挙げられるが、それは自分はキリスト教徒ではないが死ぬときにはこの曲を流してほしいと言うもの。
この曲を何度か聞けばそんな気持ちになることが納得できると言うもの。
まとめ


西洋音楽にとって教会は切っても切れない存在。
つまり宗教が絡む音楽の中には、作曲家を魅了してやまない要素が多分に含まれる。
こちらのフォーレももちろんそうだが、あのリストは宗教音楽をきちんと理解するためにわざわざ出家したと聞いている。
彼の肖像画の中でよく見かける詰襟の服装は牧師さんが着るもの。
彼は牧師の資格を持っていると聞いた。
私の音楽好きの歴史は小学校の後半から中学生にかけてに出発点が。
その最初の頃にたどり着いたのがこちらのレクイエム。
今にして思えば夜11時からのNHK教育テレビの番組が私の原点だった気がする。
それはテストで0点を取るしかなかった私が粉骨心を抱いて取り組んだクラシック音楽の奥行きを理解し始めた瞬間。
もう人生を後始末をしなければならない時期にきて、この曲の響きはより染み渡る。