あらかじめネタバレ情報で把握はしていたけど、この物語は順風満帆に物事が進んでいく設定にはならない。
万太郎の植物学にかける意気込みは他の追随を許さない。
しかし、八方塞がりとなった今は研究活動を続けるために日本国内には留まれないものと。
万太郎一家は彼を高く評価してくれるロシアのマキシモヴィッチ博士を頼って日本を離れる決心をする。
もちろん、渡航費用その他が必要になるのでそれは土佐の峰屋を頼れればとの話。
しかし、展開はそんな甘い思惑を一切許さなかった。
今日描かれた内容では物語の舞台はほぼ土佐の峰屋。
実はとんでもない事件が持ち上がる。
酒造りにおいて、最も恐れるべき腐造を出してしまった。
要するに酒が腐ることだよね。
いろんな食べ物がある中で、少々腐っても食べられるものは多いが酒だけは絶対にダメなんだそう。
酒が腐ったときのとんでもない悪臭は、ドブの放つ匂いと同じらしい。
それは、白濁した状態で現れる。
腐造菌が繁殖して酒そのものを台無しにしてしまう。
さらには峰屋が酒造りをしていた時代、忘れてはならない課税方法がある。
それは造石税。
つまり、酒を仕込んだ段階で税金を納めなければならない。
当時、日本全国でこの税制のために多くの造り酒屋が倒産したと伝わる。
信じられないことだが峰屋にも。
そして、東京で暮らす万太郎たちの長女園子が麻疹になったような。
当時は驚くほど死亡率の高い疾患。
順風満帆に見えた物語だが、生ぬるい展開は許してもらえないようだ。
目次
ロシア行き
万太郎が研究を続けるためには、膨大な量の植物標本と参考文献となる書籍が必要になる。
日本の場合、それらのものが安定的に揃っているのは東大と博物館しかない。
万太郎は、先週からのエピソードで東大への出入り禁止を言い渡された。
博物館も東大と連携した団体なので、東大に逆らうような行動をとるわけにはいかない。
悩んだあげく万太郎は博物館の2人の先生に相談をして、ロシアのマキシモヴィッチ博士のもとで研究を続けられるように移住することを決意。
寿恵子や園子や生まれてくる新しい子供も、一家揃ってお世話になろうと決意したところだった。
寿恵子の行動力はびっくりする。
万太郎は、最初単身赴任で向かうつもりだったが寿恵子は自分も一緒に行くと言い出した。
もちろん、家族全員ならばそれ以上心強い事は無い。
万太郎は、マキシモ、ヴィッチ博士に事情を話して、研究を続けられるように頼み込むことに。
峰屋に一大事
万太郎はロシア行きを決めた段階で、渡航費用だけは峰屋に頼むつもりでいた。
これが最後のお金の無心になると思っていた矢先、峰屋の様子が今日詳しく描かれることに。
綾は伝統ある酒「峰の月」と対照的な新酒を作ろうとしていた。
そしてそれはほどなく完成しようとしたところで大事件が勃発する。
それは蔵元では絶対に避けたい管理上の問題。
「腐造」とか「火落ち」と呼ばれる腐敗菌の繁殖。
これらが起こると酒は著しく品質を落とすとされる。
聞いた話では腐った酒は他の食べ物とは違って、口に含むこともはばかられるぐらいとんでもない匂いになるそうだ。
毒では無いらしいけど、腐った酒だけは使い物にならないと言われていた。
最近は以前とは違って、管理の方法も行き届いているのでめったにこんなことにはならないらしいが。
日本酒の酒蔵は、昔から木桶を使うのが普通。
ただし、これだとトラブルがあったときに簡単に現場復帰できないらしい。
一度酒を腐らした蔵は何年も元に戻らない状態が続くと聞く。
峰屋はここへきて、重大な決断を迫られることになった。
何年も無給で酒を作り続けるわけにはならない。
ここは思い切った手を打ってしのぐしかないのだ。
綾と竹雄
綾は峰屋の最後の当主となった。
しかもしなければならない決断はとてつもなく重い。
この時代の酒税は造石税と言って、酒を仕込んだ段階で課税される仕組み。
この制度のせいで、多くの酒蔵が廃業に追い込まれたとも聞いている。
腐造を出してしまえば出荷できる酒は一滴もない。
しかし、酒を仕込んだ事実には変わりはないので、税金だけはしっかり徴収されてしまう。
全く収入がないのに課税されるなど、ほとんどの酒蔵は生き残っていけないだろう。
この辺の事情は万太郎のモデルとなった牧野富太郎博士のご実家も同じような目に合っていると聞いた。。
当時の世の中が、こういった不幸を助長をさせていたのかもしれない。
園子を襲う異変
熱の下がらない園子。
急遽、医者を呼んで診察してもらったところがどうやら麻疹らしいとの事。
思わず息を飲む寿恵子と万太郎。
ロシア行きどころの話ではない。
この当時の乳幼児の麻疹は死亡率が高かった。
寿恵子のモデル寿衛さんは13人の子供を儲けたが、実際に育ったのは7人だけと記録に残る。
この物語は、どうやらその辺の事情もしっかり踏襲しているようなので避けられない不幸がそこに迫っているのかも。