らんまんは名残惜しい気持ちを抱えつつ、ついに最終回を迎えた。
物語は今まで語られてきた手法を穏やかに踏襲しつつ、すべてのエピソードに決着がついたと言える。
完成した万太郎の植物図鑑「日本植物志図譜」
厚さ10センチにもなる大変な労作の書籍は製作課程を省いて結果だけ報告する形。
万太郎と寿恵子は図鑑完成の後も穏やかな日々を過ごしていたかのように描かれた。
縁側に立たずむ年老いた2人のやりとりこそが、この物語の過去からの全てを語っていたと言える。
寿恵子は万太郎の労をねぎらい、万太郎は寿恵子への感謝の思いのたけを告げていた。
完成なった図鑑の中身も物語の中で詳しく説明が。
最初のページには、万太郎が今まで関わったすべての人たちに感謝の気持ちが述べられていた。
そして、その次には家族への感謝。
最後に幼くして旅立ってしまった長女園子への思慕。
出来上がった図鑑は万太郎の集大成であると同時に人生の振り返りにもなっていた。
物語全般を通しても、描き方は最も順当でふさわしい内容だったと感じる。
物語の最後で、スエコザサの紹介がなされていたが、本来3205種から1種類増えて3206種の植物を網羅した図鑑。
らんまんは植物学者槙野万太郎の一生を描きつつ、実際は万太郎と寿恵子の愛情物語として幕を閉じたことになる。
目次
新種発見 スエコザサ
実はこの物語のモデルもよく知っていたので、万太郎が札幌に行っている間に寿恵子が亡くなってしまうことも、想像していた。
しかし、そこはうまい具合に回避できてこの時昭和2年と発表されていた。
そして翌年昭和3年に図鑑が完成することになる。
万太郎は新しく発見したスエコザサを加えた3206種類の植物図鑑を発刊することになる。
しかし、植物学者としての万太郎の目は記憶の中からいくつかの情報を手繰り寄せ、笹に向かって呼びかける。
おまんは誰じゃ?
明らかに今までとは違うことを見抜いてしまう。
そして物語の最後で植物に向き合う万太郎の様子も描かれていた。
万太郎は今まで出来上がった原稿にさらにもう1種類加えるつもり。
それにしても大変な仕事だと思う。
新酒 輝峰
沼津から竹雄たちがきた。
藤丸の協力を得て新しい酒が完成したとのこと。
名付けて輝峰。
物語の中で語られていた。
ほんのり甘口だけど、すっきりして飲みやすいと。
日本酒の目指す口当たりが、まさにこれだろう。
もともとは峰屋時代 峰の月という銘酒製造に関わっていた。
万太郎が下戸のくせに、生まれて初めて日本酒をおいしいと感じたと。
物語の中で、この時まで寿恵子が存命な描かれ方はある意味安心感があった。
ここにいるメンバーは全員家族ばかり。
調べた範囲内で少し加えると、モデルとなった牧野博士のご実家はこの後も四国から移り住んだ場所で開いた酒蔵を閉じてしまうことになる。
やはり事業としては結果としてはうまくいかなかったと伝わる。
この物語では、そこまでの描かれ方ではなかった。
設定はフィクションなので、これでストーリー的にはありだと思う。
日本植物志図譜
完成した図鑑の立派なこと。
ページをめくる万太郎の手元を見ながら涙ぐむ寿恵子。
このシーンの時にバックに流れていたあいみょんのテーマソングがなんとも切なかったこと。
物語が寿恵子の長くはないだろう残りの人生を暗示させながらも、決してそこに深入りはさせなかった。
それはここまでの物語として成立させるためだったからだと思う。
こうした描かれ方をすることで物語的には大いに引き締まったと思う。
永遠の愛
最後の場面を収録しているときに演じていた。浜辺は23歳の誕生日を迎えたそうだ。
彼女は演じている役柄で言えば50歳を超えているはず。
昭和3年は寿恵子のモデル 寿衛さんの没年にあたる。
そう思ってみたときのこの物語のなんと切ないことか。
浜辺美波は亡くなる年の55歳を演じていたことになる。
そしてこの後も数年後の万太郎がしっかり描かれていた。
最近の朝ドラの中でここまで叙情的な作品はあまり見かけなかったような気がする。
夫婦2人の愛が昇華した時間でもあった。