物語が描き出す世界は時代背景を踏まえて受け入れがたい厳しい現実。
2回目の司法試験の筆記試験はかつて仲間だった5人のメンバーのうち参加できたのは寅子とよねのみ。
3人が戦線離脱。
司法試験はまさに戦場とも言うべき厳しい世界。
昨日のエピソードで描かれた大庭梅子は試験を受けられなかったことについて寅子に手紙を。
手紙の内容は自らが置かれた、ほぼ最悪とも言うべき現実について謝罪とともに書き記してあった。
試験会場から戻った寅子は手紙をまともには読めなかった。
読み進むほどに顔はくしゃくしゃになり、最後は机に泣き崩れてしまう。
私のような不幸な女性に寄り添える弁護士になってください!
手紙に記されてあった文言は、悲しく切なく例えようもなく苦しい。
寅子は自らが果たすべき使命の底知れぬ責任と耐えがたい緊張感に押しつぶされそうになりながらも、来たる口述試験に向けて全力で努力を傾ける。
そして迎えた口述試験の前日。
なんといつもより1週間も早く生理が来てしまった。
寅子の最も弱点とされる体調不良 生理痛。
相変わらずの症状に悩まされながら口述試験を受けねばならぬ。
試験の最中も以前よねに教えてもらった三陰交のツボを必死で抑えながら臨む。
自らの体調を鑑みながら試験に全力を出し切った寅子。
結果はなんと無事合格。
今回の試験ではほとんどのメンバーが合格を果たす。
そして今回の試験でもはねられたのはよねと優三。
優三はこれを最後にチャレンジはやめると発表。
狭き門は寅子の勝利で終わったがたどり着いた世界のシビアさは手放しで喜ぶことを許してはくれそうにない。
目次
2度目の司法筆記試験
2度目の筆記試験を受けられたのは、寅子とよねのみ。
一緒に頑張ってきたはずの他の3人のメンバーは残念ながら脱落せざるを得なかった。
この時代の女性の立ち位置は人それぞれで異なってはいても、皆おしなべて厳しい現実が背景に。
香淑は朝鮮人であるが故に反体制勢力とみなされて、初めから合格の目は摘み取られていた。
そして涼子は父親の失踪を受けて、自らが家督を継がざるを得なかった。
それは世の中の仕組みの中で、自分の果たすべき役割を棄てきれなかったため。
さらには子育てしながら法律家を目指す梅子は夫の理不尽な振る舞いによってチャレンジの目を潰されてしまった。
特に今日描かれた様々なエピソードの中で梅子と寅子のシーンは手紙を介しながらも、身に迫るものが。
寅子の泣き崩れるシーンは思わずもらい泣きしてしまうほどの切なさ。
あまりにも理不尽だと思ってみたが物語のモデル三淵嘉子さんはこういった境遇の人たちのために弁護士になったとも言える。
それは寅子も。
大庭梅子の悲しい現実
梅子ははっきり言ってしまえば、家を追い出されてしまった。
夫の大庭徹男は若い女性と再婚するらしい。
現在のご時世では絶対に許されないので。
この時代の女性の権利などを考えれば、こういったことが普通にまかり通ったのかと呆れるばかり。
寅子が筆記試験を受けている最中に自宅に手紙が届いていた。
手紙の中で書かれていた内容に愕然とする寅子。
梅子の家庭の事情は既に明らかになっていたが、ここまで女性を侮辱するような扱いを受けていたとは。
寅子は大庭徹男への激しい怒りと梅子や光三郎への憐憫の気持ちで心の中が引っ掻き回される。
演じている伊藤沙莉の泣き崩れるシーンは他の女優のものと比べても特筆すべき名シーンだと思う。
口述試験に向かうために
口述試験の最中、寅子は生理痛と戦うしかなかった。
物語の中で語られていた緊張のために1週間早まった月経とのこと。
試験の最中、三陰交を押さえる寅子を見守るよね。
寅子の弱点をよく知る彼女にとって、仲間の苦しむ様子は複雑な気持ちで見守るしかない。
不本意な体調で面接を受けるしかなかった寅子は試験に落ちたと思い込んだようだ。
自分のできることをやり切ったと述懐しながらもやはり自分は及ばなかったと思ってしまう。
しかし、結果は驚くべきもの。
口述試験の結果晴れて弁護士になれたのは寅子、中山、久保田、轟。
どうやらこのメンバーは合格。
よねと優三は名前がなかった。
現実は驚くほど冷酷。
晴れて弁護士資格を取得しても
晴れて弁護士に慣れたからといって手放しで喜ぶわけにはいかない。
ここへ来るまでに、どれほどの仲間が目の前から消えていったか。
さらには優三が今回の試験でチャレンジをリタイヤすると言う。
自分なりにやり切ったからと宣言していた。
寅子が勝ち得た世界は思い描いていたものとは明らかに違う。
少なくとも彼女は良き理解者と応援者に囲まれていた。
他の脱落したメンバーはそれが叶わなかった。
デリケートで他人への思いやりに溢れる寅子が手放しで喜ぶとは思いにくい。
勝利者故の責任と覚悟はにこやかに微笑むことを許してはくれない。