台湾の学術調査団メンバーに選ばれた万太郎。
日清戦争に勝ったことで日本国内で力をつけつつあった軍部は統制を強めていた。
植物学の調査員に万太郎を選んだまでは良かったが、その条件は恐るべきもの。
物語の中でもさらりと語られるがピストルを購入して携帯すること。
要するに、それだけ治安の悪い地域に出かけてしまうという。
自分の身を守るためには、自衛のための手段を自ら所持しなければならない。
万太郎のポリシーとして、誰からも仲良く親しく接してもらうためには自ら相手の懐に身1つで飛び込んでいく。
これは子供の頃から変わらない万太郎の特徴だった。
台湾に行くことになって万太郎が真っ先にやろうとした事は台湾語の習得。
そして、下準備として台湾語で書かれた書物もあらかじめ読破しておきたい。
しかし、準備の期間は1ヵ月ないと宣言されてしまう。
それでは間に合わないと躊躇する万太郎。
徳永教授と細田助教授は、万太郎を説得しなければと焦ってしまう。
そして、博物館の里中先生は時代が変わって我々は植物学者であると同時に、国家の一員でもあるのだと自覚しなければならないと語る。
その言葉には逆らえるはずもなく。
万太郎は悩んだ末、寿恵子にも相談。
ピストルの所持はやめることにして代わりに、自分自身が発行した植物志図譜をもっていくことにした。
目次
台湾行きの内情
学術調査とは名ばかりで実際は日本が支配を進めるための出先調査のようなもの。
万太郎は頭ごなしに日本に有益な植物を見つけてこいと命令される。
さらには、ピストルも必ず購入して携帯するようにと。
明らかに万太郎の植物に対するポリシーとは異なる。
台湾を間違いなく支配するためには様々な点であらかじめ調査が必要。
どうやら、今回の学術調査はすべて軍主導で計画されたものらしい。
里中先生が苦しげに答えていた。
予算をいっぱいつけてもらえるのはありがたいが国のために働かなければならない。
当時、欧米諸国を始め世界中を席巻していたのが覇権主義。
強いものが弱い者を支配し利益を独り占めする。
中国を始め、アジアの様々な地域は格好の餌食にされていた厳しい事情がある。
徳永教授たち
大学でのやりとりで教授と助教授の発していた言葉が特に気をひいた。
細田は外国に留学した日本人がどれほど惨めな思いをしてきたかと力説していたね。
純粋に学術研究のための留学であっても、留学先ではおそらくだが、
イエローモンキーと馬鹿にされていたんだろうと思う。
これが明治の日本と先進国との関わりだったんだろうと。
ちなみに、語られていた時代は明治29年とあった。
物語の最後の方では、台湾に到着した万太郎の様子も描かれていたね。
物語を見ていたらすぐにわかることだが、このときの万太郎は台湾語の使用を厳しく停められていた。
つまり、案内人を通して日本語で話せと
しかし万太郎にしてみれば、植物の様々な事情を詳しく知ろうとすれば、現地の言葉で会話する事は何にも増して求められる。
さらには自分自身の研究を進めるためには、デリケートな部分に至るまで詳しく知りたい。
万太郎の気持ちに嘘は全くなかろう。
徳永教授も細田もドイツに留学していて今まで語っては来なかったが、現地でかなり惨めな思いをしたことが想像できる。
そして彼らの中に芽生えた反骨心は対欧米で埋め尽くされていたのかもしれない。
細田の激しい口調にはそういった憤懣やるかたない感情がしっかりと見て取れた。
植物学教室の研究状況
研究室では、羽多野と野宮が大量の銀杏を前に実験のための準備をしていた。
彼らは銀杏の受精の様子を研究対象に選んでいた。
植物学の研究は、今ではミクロの世界にその中心を移しつつある。
万太郎が貫いている研究姿勢は実は昨日のエピソードでも詳しく語られたが時代おくれとされているようだ。
要するに新種の植物を見つけて名づけ親になる。
そこから進んで植物の仕組みとか働きとか生理学的な働きにまで研究対象は追求されていた。
植物学教室でも新しい顕微鏡が用意されていて、それについての説明も先の二日間の物語で語られていたと思う。
羽多野と万太郎の会話の中で、子供の頃時計を分解して中はどうなっているのか知りたくて!と言う内容の会話があった。
万太郎の植物研究に対する姿勢は、細かい仕組みや働きにも及んでいるとは思うけど、時代は少し変化していったのかもしれない。
政治的な力関係の上では、純粋な学術研究はあまり意味をなさない。
万太郎と寿恵子
巳佐登ではどうやら売れっ子の中居になっていると思われる寿恵子。
店の人力車を利用出来るような身分に。
寿恵子の帰りを待っていた万太郎はピストルを始めとする台湾行きの話を。
万太郎はピストルなど持って行きたくない。
少し考えてから寿恵子も万太郎に同意していた。
その代わりに持たせてくれたのが、最初に万太郎が発行した植物志。
この本が守ってくれるはずと。
おそらく、この物語のこれから先のエピソードで、その理由が明らかになるはず。
いよいよ、台湾での物語がスタートする。