光る君へは今日の放送で5話目。
平安時代のドラマの設定なので、歴史的なことを考えれば、取り立ててドラマチックなことがあるはずもなく。
物語を物語らしく彩るエピソードは、脚本家が登場人物それぞれを際立たせて展開をこしらえるしかない。
この時代の特筆すべき特徴は、権力闘争。
天皇を中心とした貴族社会ということは誰もが知るところだが、天皇の周りの者たちはどのように自らの権力を拡張するか、常に腐心。
重要なキーパーソンは、右大臣藤原兼家。
彼の朝廷内の立ち位置こそが、物語を起動させる原動力になる。
主人公まひろは6前自らの母親を兼家の二男道兼に殺されてしまう事件に遭遇。
子供の頃の話ゆえ記憶が曖昧だと思いきや、彼女は犯人のことを決して忘れずにいた。
まさかと思ったが、なんと藤原道長のすぐ上の兄だったとは。
まひろは手を尽くして、道長にことの次第の全てを告白。
道長はまひろの訴えを前面的に信頼。
さらに兄の不祥事を父親が揉み消した事実を知ることになる。
自らの家系の不始末を非合法な手段で揉み消すやり方は、道長の正義感に火をつける。
物語は藤原道長とまひろが不思議な縁で導かれる興味を引く作り。
物語を彩る恋物語などはまだ表立っては描かれてはいない。
脚本家が意図する通り、ドロドロした人間ドラマがこれから繰り広げられるものと推察。
目次
花山天皇と側近たち
花山天皇は調べてみたところ、在位はわずか2年ほど。
出家する形で退位している。
その理由というのがこの天皇らしいエピソードによる。
彼は無類の女好きで女たらし。
女性関係の評判はすこぶる悪い。
そんな中、1人の女御にご執心となった。
ちなみにこちらの女性藤原忯子は16歳で入内してすぐに子供を妊娠。
一旦は里帰りして出産に備えていたはずが、天皇が執拗に内裏に上がるように催促。
しぶしぶ側に支えることになったが、おそらく度が過ぎた行為に及んだものと思われる。
子供を身ごもったままなくなってしまうのだ。
享年17歳と伝わる。
花山天皇はこのことを痛く悲しんで出家。
政治的には若者らしく次々と改革案を実行しようとしていたが、貴族勢力とは明らかに対立。
朝廷は、天皇の周りの勢力争いが政治の全てだったかもしれない。
少なくとも1部の特権階級の者たちだけに政治は成立していた。
藤原兼家の1族
藤原兼家は3人の息子の他にも正室以外の女性との間に子供がいたりする。
兼家の娘には詮子(あきこ)がいる。
円融天皇に入内して男子(後の一條天皇)を設けるが父親の天皇毒殺の嫌疑をかけられて、徹底的に嫌われる。
この物語の藤原兼家は明らかに悪役。
自ら権力を掌握するためには手段を選ばない。
身内の不祥事なども全て手を回して黙殺する。
物語の主人公の相手役としての藤原道長の父親に相当するところが設定としてはかなりえげつないのかも。
まひろの一計
まひろは母親を殺した犯人が藤原道兼なことをしっかり記憶していた。
もともと頭の良さでは定評があった彼女が忘れるはずもないので。
犯人を見つけては見たが、どうやってその事実を周りのものに伝えるべきか、やり方を間違えれば、とんでもないことにもなりかねない。
父親はどこまで行っても、自分の雇い主藤原兼家に気兼ねして表立った事はやらない。
まひろがとった行動は藤原道長にありのままを告げること。
ドラマは詳しいいきさつが丁寧に描かれて事情がよく納得できる作りに。
物語の奥行きの深さは、母親を殺した犯人は間違いなく道兼だが、反抗を誘発したのは、自分だと自らを責めるまひろ。
1族の犯した罪は自分が汚名を注ぐしかないと感じる道長。
ドロドロした勢力争いの中、2人の心の中にはしっかりした真心があるように描かれているところが好印象。
藤原道長の覚醒
藤原道長は兄2人の下で、表立っては決して目立とうとはしない性格。
しかし、父親が認める通り、本質を見抜く目は兄2人を凌駕するものがあったようにも描かれている。
そして穏やかで静かな印象のくせに、理不尽なことがあれば感情を爆発させる。
つまり自分の気持ちのためには情熱をたぎらせてせて、1歩も後へひかない。
道長はおっとりしたように見えていながら、本質をしっかり見抜く力はずば抜けていたようにも感じる。
そして、稀なる正義感。
自分の父親は権力のためには手段を選ばずに卑怯な手をいかようにも下すことを見せつけられた。
やがて彼が朝廷のトップに君臨することになるが、その時の前哨戦が今始まった。
この時代、今と違って、医療もさほど発達はしていない。
人は見かけほど長生きしなかった時代。
藤原道長が権力の頂点に駆けのぼる日もすぐそこにまで。