「光る君へ」は平安時代の中期紫式部が源氏物語を書いていた頃と設定される。
この時代、政治的に何か大きな事件があったわけではない。
さらには、詳しい資料が残っているわけでもなさそう。
物語の脚本を作るにあたっては、どうしても脚本家の筆力に頼らざるを得ないのだろう。
今日描かれた物語では、紫式部と清少納言が同じ場所で語り合うシーンなどが描かれた。
実は資料を詳しく調べてわかることだが、この2人は同じ時期に宮中に参内していたわけではなさそう。
微妙に年代がずれていると言うのが最近の研究だと聞いた。
しかし、それでは物語そのものが成立しない。
この時代を代表する2人の文学家が同時に物語に登場してこそ初めてドラマが面白くなる。
子供の頃のトラウマが原因で、引っ込み思案なまひろ。
活発で物怖じせずに発言をしたがるききょう(清少納言の事)。
2人の天才文学家のキャラクターがくっきりと描き分けられていた。
それにしても時代はドロドロと陰謀が渦巻く。
まひろの父は右大臣藤原兼家の庇護の下、官職を得ていた。
父親の仕事を手伝う意味で、スパイのような真似さえさせられるまひろ。
しかし、前回からのエピソードでまひろが思いを寄せる藤原道長のすぐ上の兄道兼がまひろの母の仇であることを知ってしまう。
運命の無慈悲な流れに激しく心が乱れるまひろ。
それぞれの気持ちはそっちのけで波瀾万丈の運命が繰り広げられる。
目次
まひろが抱えるトラウマ
物語の主人公は紫式部、ドラマの中では「まひろ」と呼ばれる。
彼女は子供の頃、目の前で母親を殺される不幸に見舞われた。
幼い頃の事とは言え、決して忘れる事はなく犯人の名前も顔もしっかりと記憶している。
父親は母親が殺された事実を自らが仕える貴族の手前、隠蔽しようと。
激しく反発するまひろは心の中に拭い去ることのできないトラウマを抱えることになった。
平安時代の政治は、朝廷を中心とした貴族の勢力争いに終始。
少なくとも民衆の方を向いている事はなかった。
また貴族たちは自分の官職こそがすべて。
どうすれば自分の利益に直結するかを、常に腐心していたように思う。
まひろの文学的才能
源氏物語の作者として世界的に有名な紫式部。
同時代の女流作家として清少納言がよく知られる。
物語の中では、彼女は清原家の娘。
ききょうと呼ばれていて、まひろとはどうやら真逆な性格。
物語の中で重要な役どころと思われる。
枕草子の作者として日本だけでなく世界的に有名。
紫式部は自分自身の文章の中で清少納言を激しくけなしているらしい。
実際に2人が会う事はなかったはずだが、彼女たちが仕えた女性同士がライバルだったこともあってそのことを反映していると伝わる。
平安貴族の勢力争いは男たちだけのものではなかったようだ。
藤原道長の政治への関わり
物語で語られる藤原道長は、政治にはあまり関心がないように見える。
しかし、この後道長は1族の中でもトップに君臨することになる。
この時代、平均的な寿命が50歳の手前だったことを考えれば、大抵のものは早死にすることが多かったようだ。
道長の父藤原兼家は右大臣で相応の地位についていた。
父親の関心事は1族の繁栄。
ただし、今日の物語の中で1族の中にも汚れ役が必要だと語っていた。
汚れ役こそがまひろの母親を殺した道長のすぐ上の兄道兼。
道兼は1族が既に汚れていることを思い知ることになる。
藤原道長が、この後朝廷のトップに君臨するためにはそれなりの画策が必要と思われた。
今の段階では、道長は藤原家のナンバースリー。
彼の上位に立つものが数名存在している。
排除する以外に方法はなかったはず。
漢詩の会
漢詩の会は中国の詩歌を必要に応じて披露し合うもの。
当たり前のことだが、相応の知識が求められる。
当時は印刷技術もそれほど発達はしていなかった。
書籍と呼べるものは書き写しで残すしかなかったわけで、それらの文章に触れる機会も一般人ではままならなかったと思われる。
貴族と呼ばれる者たちは、男女に限らず教養の1部として文学に親しく接する者たちがもてはやされたようだ。
今日描かれたエピソードの中でどこを1番の見所にあげられるだろうか。
あえてまひろと源倫子の2人のやりとりを上げてみたい。
この時代を生きる女性たちの胸の内が象徴的に描かれていた。
倫子が見たまひろは常に緊張を強いられているように映っていた。
生い立ちを考えれば納得できる部分も。
倫子たちは書籍を読むことが苦手と語っていたが、この時代の女性にとっての1番の関心事は誰と結婚するかだったのかも。
時代は婿入り婚が当たり前。
何気なく展開している物語だが、それぞれのキャラクターは思いのほか色鮮やかに映る。