この1週間の物語の流れは、今までの朝ドラの中でも間違いなく筆頭に位置するほどの説得力があったように思う。
スズ子は変わり果てた姿の幼なじみタイ子をなんとしても助けたいと。
タイ子によればスズ子のおせっかいは筋金入りとのこと。
しかし、今回のスズ子の助け舟は結論から言えば命に関わるほど大切なものに。
1視聴者の私としてみればタイ子がもし重大な病気に侵されているならと不安を拭いきれなかったが、結果は「脚気」とのこと。
今ならありえない病気で東京が江戸と呼ばれた頃の典型的な病気。
いわゆる「江戸わずらい」と言う奴。
ビタミンB1不足で起こる。
もちろんきちんとした治療薬もあるが、今なら手っ取り早く市販のビール酵母などをサプリメントとして飲んでおけばほぼ間違いなく治るだろう。
原因は玄米を食べることをやめて白米を多食したことによるものとされる。
タイ子の場合は典型的な栄養失調。
わずかばかりのお粥か雑炊みたいなものをすすっただけの食事を毎日続けたんだろうと思う。
スズ子の渾身の説得はついにタイ子の心を解きほぐした。
そして物語の中盤から描かれるスズ子の新曲はジャングル・ブギー。
これはオリジナルの笠置シズ子の圧倒的な歌声がぐうの音も言わさぬほど素晴らしい。
そして、この曲がとある映画監督の依頼によるものだとどれだけの人が知っているだろうか。
目次
スズ子に解きほぐされたタイ子の心
スズ子とタイ子のやりとりが胸を打つシーン。
2人とも涙でボロボロ。
タイ子は自分の人生がスズ子と比較すると、あまりに無様で惨めで恥ずかしいと語っていた。
その発言を真っ向から否定するスズ子。
タイ子ちゃんはスゴい。
達彦いう立派な素晴らしい息子を育てあげた。
こんないい子を育てたタイ子ちゃんには元気になってもらわな困る。
頼むから元気な姿に戻ってや
スズ子の申し入れをおせっかいと思いつつ、タイ子はついに心を開く。
スズ子や達彦の願いを聞き入れて、きちんと医者の診察を受けた。
栄養失調による脚気
戦後のご時世とは言え、一体どれほど厳しく辛い生活を繰り返してきたのか。
この頃のとりわけ都会に住む大勢の日本人はそのほとんどが似たり寄ったりの生活をしてきたと思う。
とりあえずは命があったことが不幸中の幸いだったのかも。
不思議な縁で再会した2人だったが、これでやっと元通りの関係に戻れたのかも。
幼なじみの復活
もともと一緒に過ごす時間が長かった2人。
学校で同級生と言うこともあったが、学校から帰った後は、踊りの稽古などさらに一緒に過ごす時間が長かった。
思春期の女の子同士、恋バナなどもそれとなく話題に登っていたように思う。
タイ子ちゃんの初恋の相手におせっかいを焼こうとして失敗したスズ子。
しかし、スズ子の失敗を許してくれたタイ子。
大人になってからも、2人の関係は何のわだかまりもなく続いていたような。
ブギウギでは今週いっぱいでタイ子ちゃんのエピソードは終わる気がする。
このエピソードでは、スズ子とタイ子ちゃんの時代背景に基づいた関係が詳しく描かれていたが、物語が本当に取り上げたかったテーマはおミネたちパンパンガールとスズ子の人を差別しないおおらかな性格についてが見所になるだろう。
パンパンガールたちは生活のためにギリギリのものを売って生きていた。
スズ子の人生を考えたとき娼婦たちも全力で生きている人で自分と同じ。
それ以外の意見等ほぼ関係なかったのかも。
おミネの願いとスズ子の役割
どうやらおミネたちとはすっかり打ち解けたスズ子。
愛子を連れて一緒に食事をするなど親密な関係が見て取れる。
スズ子はタイ子に笑顔が戻ってきたとおミネに感謝を述べていた。
おミネは将来の夢としてパンパンガールを辞めていく子たちのために、職業訓練所を作りたいと。
生きていくには手に何か職があったほうが良い。
そのための訓練学校。
すぐさま賛成するスズ子、そして自分にできることがあったら何でも手伝うと語った。
おミネは優しく諭す。
あんたがやるのは歌うこと。
みんながどれだけ元気付けられるか。
あんたは歌ってこそ人を幸せにできる。
それはかつて最愛の愛助が語った言葉。
福来スズ子の歌は人を元気付け勇気づける。
スズ子はどんな職業の人間であっても決して差別せずに、真面目に一生懸命生きることを人生の指標にしていたようだ。
ジャングル・ブギーの真実
曲が発表されたのは昭和23年。
この年の春に黒澤明監督の酔いどれ天使が公開された。
今日紹介された曲は、劇中曲。
笠置シズ子そのままにブギを歌う女として登場。
今日趣里のジャングル・ブギーが披露されていたが、はっきり言わせてもらうがオリジナルの方が圧倒的に素晴らしい。
物語はこの曲で来週へと崩れ込むことになる。
しかしスズ子の波瀾万丈の人生はここからさらに激しさを増していく。