ブギウギを物語として見たときに、戦後の復興の時期と被る部分があって、時代背景を掘り下げることにもつながる。
今日のエピソードの最後に登場した
ラクチョウのおミネ
当時の有楽町界隈で街娼たちのまとめ役をやっていた。
実はブギウギに登場する人たちは、ほぼ全てが実在の人物をモデルにしている。
田中麗奈演じるおミネもブギウギのモデル笠置シズ子の人生からは切っても切り離せないほどの深い縁でつながっていた。
笠置シズ子は「ブギの女王」と呼ばれて、戦前から戦後にかけて日本を代表する大歌手だったが私の個人的な思いとして、物語で語られるほどの知名度には達していない記憶が。
ブギウギを見るようになって詳しく裏の事情を検索していて気がついたことがあるので、少しずつ紹介しようと思う。
今日の物語に出てくる靴磨きの少年とその母親タイ子。
この2人だけはフィクションで作られたキャラクター。
しかし他は皆実在の人物で、笠置シズ子と深い絆で結びついたご縁がある。
それは当時(昭和22年から30頃に至るまでの時期)、全国の街角に立つ娼婦たちとの関係。
日本の戦後の復興史を考えれば、どちらかと言えばなるべく隠しておきたいことなのかもしれない。
朝ドラがこの部分に真っ向から取り組もうとしている姿勢は私的に大いに評価できる。
目次
東京ブギウギの大成功
戦後の日本を元気付けるための楽曲 東京ブギウギ。
レコード発売と舞台講演が同時進行で進むが、特に舞台は連日満員でスズ子はや押しも押される大歌手として知られるように。
楽曲の素晴らしさも去ることながら、何よりもスズ子の歌い振りが当時の日本の世相にぴったりはまったことが言える。
戦後の復興期とは言え、まだ終戦から数年しか経過していない状況では何もかもが発展途上。
日本全国で励まし勇気づけられ元気を求める気運が頂点に達していた。
スズ子は愛子の子育てをしながら舞台に立ち続ける日々を過ごしていた。
靴磨き少年達彦の物語
既にネタバレしているので、この少年が何者なのかはほぼすべての人が知っている。
彼はスズ子の幼なじみタイ子の一人息子達彦。
タイ子はどうやら訳あってバラック小屋で暮らしている。
確か結婚したところまでは記憶に残っているが、それ以降の消息は掴めていない。
いずれ物語の中で明らかにされるとは思うが、今は体を壊して床に伏せっている状態。
達彦はお金を稼ぎたい一心で、インチキなどにも手を染めていた。
彼は靴磨きの仕事を増やすために往来にわざと水たまりをこしらえて、靴が汚れる人が発生するのを待っていた。
そのことを素早く見抜くマネージャーの山下。
商売は真っ正直にやらなければ何も身に付かないと厳しく諭す。
しぶしぶ従わざるを得ない達彦。
今日物語の裏の事情が明らかになっていた。
母親を病院に連れて行くためのお金をなんとしても稼ぎたい。
そしてエピソードとして心動かされたのは達彦が何気なく口ずさんだ東京ブギウギ。
タイ子はその歌は嫌いだから歌うな!と。
スズ子の活躍を知っていて、自分自身も芸ごとで身を立てるはずだったものが途中戦争などもあって、今はすっかり身を持ち崩している。
同じように苦労していても、片や不幸なまま、一方は大成功を収めている。
素直に受け入れられない気持ちもなんとなくわかる。
売れっ子作曲家羽鳥善一
羽鳥善一は殺到する作曲依頼で身動き取れない状態。
確かに彼が残した名曲は、今でもしっかりと音源が残っていて歌謡曲の全般にわたる。
スズ子からのオファーももちろん忘れてはいない。
しかし、催促されたから次々に曲が出来上がるわけではない。
創作活動は、そんな甘い作業では無いので。
この後、モデルの服部良一は笠置シズ子とのコンビでヒット曲を連発することになる。
おそらくこの物語でも詳しく描かれることになるはず。
考察 おミネとの関わりから見る当時の街娼たちとのやりとり
今日描かれたこのエピソードはモデルの笠置シズ子のエピソードとして捉えるのが妥当だろう。
笠置はこの頃街中で後ろ指刺される娼婦たちを蔑むことを決してしなかったと伝わる。
むしろ生きるためにそのような仕事を選ぶしかなかった彼女たちを擁護していたとも。
笠置のほとんどのヒット曲、特に戦後発表されたブギの作品は全国の娼婦たちから大絶賛されていたようだ。
彼女たちは日劇の座席の半分を買い占めてステージに駆けつけるなど中途半端なファン活動ではなかった。
笠置はそんな娼婦たちを他の人たちと平等に扱って交流していたと伝わっている。
今日から描かれるおミネとのやりとりはこのようなエピソードに基づくものと思われる。
笠置の人となりは見かけで人を判断しないことに尽きる。
生きるためにどんなことをしていようが、その生き方は等しく尊敬されるべきだと言う。
明日以降スズ子とおミネのやりとりから当時の様子も詳しく語られるものと思う。