じっくり見てみると、今日のブギウギはかなりユニークな出来上がりになっていたと思う。
早々に誘拐事件の犯人は捕まると思ってはいたが、その前後のストーリー展開がなかなか味わい深い。
予告編の映像も所々に本編として流れていたが、今日見ることで辻褄があったような感じ。
愛子は初めてできた友達(小田島一)との約束を果たすために、スズ子たちの言いつけに背いて学校に行きたいと譲ろうとしない。
犯人がすぐそばにいるのに、そのまま学校に行かせられるはずもなく。
愛子は友達との約束を破って1日家で過ごすことに。
犯人からは身代金引き渡しの連絡があって、その場所がなんと日帝劇場のロビー。
誰もが知っている場所だがお金の運び役は犯人指定で、マネージャータケシが務めることに。
ただし、物語の1番描きたかった部分はスズ子の愛子への思い。
親の気持ちを受け入れようとしない娘。
2人のすれ違いが明らかに。
親娘の切ない間柄に彩りを添えたのが高橋刑事。
さりげなく描かれていたが、高橋刑事にも娘がいるらしい。
年頃の娘は育てるのが大変との親心に寄り添う形。
さらに警察での取り調べの様子もかなりユニークな描かれ方。
犯人の前でおもむろにカツ丼を食べ始める高橋刑事。
つばを飲み込んで我慢する犯人の前に、より豪華なカツ重が置かれる。
ちょっとした刑事物語を見ているようなベタなストーリー。
しかし、物語の中心に据えられていたのはやはりスズ子と愛子の行き違い。
目次
刑事たちの焦り
刑事たちの気持ちとしては、犯人がいるかもしれないところにみすみす子供を行かせるようなことだけは絶対にしたくない。
安全を優先させるために家にいてもらうのが1番。
8歳の愛子が素直に「はいわかりました」ということにはならなかったようだ。
スズ子が力づくで押さえ込もうとするのを制して愛子に寄り添ったのは大野さん。
茨田さん紹介のお手伝いさんはここでも大いに頼りになる。
犯人を必ず捕まえる決意のもと、刑事たちはスズ子の自宅に待機。
電話を待つばかりに。
犯人の要求
物語なので電話はすぐにかかってきた。
身代金は3万円を日帝劇場のロビーまで持ってくるようにとの事。
そして運び役は、マネージャーがお手伝いのどちらかに指定。
マネージャータケシが受け渡しの役目を。
物語の中でも語られていたが、スズ子のセリフで「3万でいいんでっか?」
これはこの当時でも、それほどの金額ではなかったことが見て取れる。
昨日のブログでも紹介したが、昭和30年、当時の物価等のレートを考えると、500万円程度になるものと思われる。
それにしたって大金であることには違いない。
モデルの笠置シズ子が長者番付に登場するほどの高額納税者だったことを考えれば、この程度の金額ならすぐに対応できたんだろうと想像する。
しかし、物語で大切なのはスズ子と愛子の親子関係がどんなふうに描かれるか。
スズ子は愛子に迫る危機を全力で取り除こうとしているが、愛子はをそれを親の愛情とは受け取らない。
すれ違うスズ子と愛子
犯人はあっさりと捕まってしまう。
刑事の1人が柔道の技で見事に投げ飛ばすシーンは予告編でも描かれていた。
スズ子は危険が去ったことで一安心だが、愛子は友達の一君との約束を破ってしまったことが残念でならない。
そして一君がどうやら犯人の息子なことも知ってしまう。
愛子のためを思っての行動だったが、どうやら愛子はありがたいとは受け止めていない。
せっかくできた友達と会えなくなってしまうことが悔しくて仕方がない。
誕生パーティーでたまたま招待されていた少年が一君だった。
誕生パーティーそのものも愛子が望んでいたわけではない。
全ては母親が計画して行動したもの。
自分は母親のせいで大切な友達をなくしてしまったとスズ子を恨む気持ちが湧き上がってくる。
この時代有名人の子育てはかなり難しかったんだろうなと推察。
親子だからこそわかり合わなければならない部分があると思うので。
時代背景から考える子育て
高橋刑事の取り調べの様子が刑事ドラマを見ているような描かれ方
高橋刑事本人は並盛りのカツ丼。
犯人の小田島には特上のカツ重。
息子にも食べさせたいと涙ぐむ犯人。
ブギウギは悪人を懲らしめるドラマではない。
戦前から戦後にかけて大活躍したジャズテイストの歌手の物語。
彼女は未婚の母として子育てをしながら芸能活動に邁進していた。
人間福来スズ子の物語はどこまでいっても頑張った人たちにエールを送り続ける物語でもある。