昨日テレビで宮崎駿の特集番組をやっているのを見ると、やっぱりどうしても興味が湧いてしまう。
初めて天空の城ラピュタを見てからジブリのファンになった私。
アニメーションて、こんなことができるんだと教えてくれたのがここジブリ。
で、わざわざ映画館にまで足を運んでみたのが「紅の豚」
この作品もテレビでコマーシャルを見ていて、どうしても見たいなと。
まだシネコンなどの大きな映画館がなかった頃、隣町まで行って見た記憶が。
目次
自らを魔法で豚に変えたパイロットの話し
この頃1915〜6年のイタリアでの話が、この作品の時代背景。
主人公のポルコはもともとはイタリア空軍のパイロット。
戦争では撃墜王でならしたが、今は賞金稼ぎとしてのパイロット。
世の中に対しては距離をおきたいようで、人間から豚に自ら姿を変えたようだ。
実はこういった動物のような人間のような不思議なキャラクターが、ジブリ作品では普通に語られることが多いが、まるで違和感がない。
ジブリ作品の大きな特徴で、ちょっと興味を持って作品を見れば、そこで語られる世界の中にどっぷりと浸ることができる。
人間の形をした豚なんて普通はありえない。 しかし、
もっともらしくありえないことを語るのがアニメーション。
ポルコは自分が愛用していた飛行機を著しく破損してしまい、新しい飛行機を作るため、昔なじみの知り合いを訪ねて、物語はそこから始まる。
時代背景から考えると、第一次世界大戦で勝利したイタリアは、勝利の栄光もほぼなく、すでにファシスト政権が誕生していた。
その結果、秘密警察のような非合法な活動をする輩が町中に闊歩していたのだ。
物語は、その秘密警察から巧みに逃れながら自分の生き様を貫こうとするポルコの話し。
時代は第一次世界大戦が終わった後
宮崎駿の作品なので、原作から監督に至るまで、全て彼1人で行っていたようだ。
彼の作品の中で感じるのは、その時その時の画面から出てくる空気とか気温とか、あるいは匂いなど不思議なリアリティー。
本来感じられないものが、微妙に漂ってくるところが彼のアニメの凄いところ。
この作品の主要なテーマは何か?と映画を見ながらいつも考えていた記憶がある。
映画の決めゼリフの中に、
「かっこいいとはこういうことさ!」
とあるが、要するに見栄を張ることを1つの美学にしているところがテーマ。
不思議な作品で、このような見えっ張りなテーマを掲げておきながら、主人公ポルコはそのテーマを心の中で否定して鼻先で笑っている。
この相反する不思議な葛藤こそ作品のユニークな持ち味。
大体、ポルコの姿かたちを見れば、およそかっこよさなど感じるはずもなく。
だって、彼は豚さん🐷
世の中から、1本 2本 線を引いて、自分の世界を生きようとする男。
調べてみると設定では、36歳くらいかなとあった。
森山周一郎のダミ声がポルコのキャラクターを際立たせていた。
魅力的な登場人物
ここで登場するフィオは多分17歳くらいの少女。
ポルコが信頼する飛行機のチューニングを行うピッコロじいさんの孫の設定。
設計を担当する彼女はとても才能に溢れている努力家。
彼女はポルコのために徹夜をして設計図を書き上げる。
実は徹夜をしたフィオに投げかけたポルコのセリフが、なかなかユニークで記憶に残っている。
「努力は認める。
ただし夜更かしはするな。
お肌によくない。」
ここら辺のフェミニストを気取った発言が、この映画の全体を通しての特徴と言える。
相手のことを気遣っている割には、自分自身の希望というか、相手に対する望ましい姿とかをしっかりと主張する。
こういったセリフのやりとりは、作品のイメージをしっかりと築き上げ、全体の色合いというか匂いというか、独特の味付けで世界観を表す。
また映画館でこの作品を見た私にとって、真っ先に感じたのは歌。
シャンソンを歌っていた歌手がいたのだが、後にそれが加藤登紀子と知ることに。
加藤登紀子はよく知っていてレコードも持っているくらい大好きな歌手。
シャンソンがうまい事は昔からよく知っていて、
ここで歌われている歌はまさに本物。
フランスのとある歌手が歌ったんだろうなと思ったぐらい。
私の中では加藤登紀子の中のイチオシとも言えるぐらいの名曲。
加藤登紀子は声優としてもこの作品に出演。
あのバーのマダム“ジーナ”の役柄。
3回飛行機乗りと結婚して3人とも死んだそうな。
作品の中では、それほど不幸を背負っているようには見えなかったが、マダムとしては誰からも好かれていてファンも多かった。
加藤登紀子が声優として出演したのはこれが最初ぐらいかな?
俳優としては何度か出演している姿を見ているが、私的には歌手のイメージがとても強くて。
彼女の歌う歌声に励まされて青春時代を過ごした記憶が。
私にとって紅の豚は彼女に対するメモリーもあった。
ちなみにだが、ここで出ているライバルのカーチスはモデルがいるそうな。
なんとアメリカ元大統領ロナルドレーガン氏。
そう言われてみればレーガン大統領は元俳優だったわけだし、政治家に転身してから大統領まで上り詰めた人。
日本では中曽根総理とロン、ヤスで呼び合う親しい仲が売りだった。
もうすでに過去の人だが。
そのような著名人をさりげなくモデルに使うところが宮崎駿の感性。
まとめ
様々な決めゼリフがあって、
「飛べねぇ豚はただの豚 」
「生命保険なんか豚にはいらねーよ」
この辺のセリフがいまだに耳元に残る。
そしてポルコが自らの基地として、利用していたアドリア海の小さな島。
そこでの海岸線での昼寝をしている呑気な姿が、私的にはたまらなく素敵に思えた。
できればこういったぐうたらな日中を過ごしたいものだと。
すっかり年取った今、私は、この絵にあるようなポルコの日常に近いものを過ごしている。
人間は、基本 あくせく生きたってしょうがない 。
自分が感じるままに、心ときめくものを中心に据えて生きるべきなんだとこの作品は語っていたような気がする。
ひょっとしたら作者の宮崎駿の本当の願いだったのかも。
表現者としての宮崎駿は自分の世界観を表現することに心血を注いでいた。
この作品が封切られた1992年。
私は封切りと同時に映画館で見たのだが、見終わってからの爽やかな感じは自分的にも意外な気がした。
この爽やかさこそが宮崎駿の表現したかったことなのかもしれない。
すでに四半世紀が経ってしまっているが、作品としての値打ちが色あせる事はなさそう。
後述
実は風立ちぬを制作しているときの様子が特集番組で事細かに描かれていた。
彼が何にこだわって作品作りに向かっているのか。
一言で表現するならリアリティーの追求。
アニメでリアリティーもクソもないと思うが、アニメだからこそできる様々な手法で人間の心の機微をどれだけ克明に描くことができるのか。
そこには様々な人間を観察してきた宮崎駿のたくさんの思い入れも込められていたりして。
特に風立ちぬの主人公の堀越二郎を演じた庵野秀明
彼 ちゃんとした声優じゃないよね。
あのエヴァンゲリオンの監督だったはず。
結局彼を起用した一番のポイントが、
頭のいい奴ってのは口数が少ないんだよ。
そして何考えてるんだかわからない。
ここで宮崎駿のこだわりが出ていたんだと。
つまり作品の主人公堀越二郎は零戦を作ったほどの天才。
頭が良い事は間違いないが、口数多く物事を話さない。
彼の頭の中は普通の人では理解不能なので結局何を考えているのかわからないように見える。
その雰囲気にぴったりだったのが庵野秀明。
実は番組を見ていてこの辺のキャラクター設定というか声優の選定の様子に1も2もなく私は反応してしまったのだ。
そう言われてみれば彼はあの朝ドラなつぞらにも神っちの役どころで出ていた。
この画像を見ると驚くほど似ているけど、ここでは俳優に注目。
染谷翔太
彼 麒麟がくるで言わずと知れた織田信長を好演。
私も彼の信長に驚くほどのリアリティーを感じていて、物語の面白さについつい引き込まれる1ファン。
さて、なぜかNHKにもしょっちゅう顔を出してくる宮崎駿。
すでに70歳を超えてもう現役復帰する事は無いのかもしれないが、日本アニメ界の重鎮として、これからも健在で様々な作品を見守っていて欲しい。