ついに道頓堀の舞台に再び立つことを決めた千代ちゃん。
ここまでに様々な紆余曲折があって、自分なりに検証を繰り返してきた。
何といってもここ道頓堀は千代ちゃんの人生そのもの。
辛いことがあって何もかも捨てようとしてしまったけど、本当は捨ててはいけないこともあった。
昨日までのエピソードでそのことが詳しく語られていたね。
公演はたった1度、千代ちゃんは舞台のために準備できる時間はわずか5日間。
限られた時間の中で渾身の演技を娘春子のために披露する。
おちょやんは今日と明日で完結する。
目次
お家はんと直どん
なんとも粋な計らいのチラシが。
おかえり竹井千代の文字が心温まる演出に。
ネタバレで、この演目が取り上げられる事は知っていたが、実は千代ちゃん、およそ2年ほど前道頓堀を去る直前、この同じ演目の舞台で大失態を演じていた。
ちょうどあの切ない離婚騒動の真っ最中。
千秋楽まで必死に耐えて演じてきたところが、最後の最後で思いが沸騰してとても演技どころではなくなってしまったのだ。
あの泣き出してボロボロになるシーン。
実はこのドラマではそれほど詳しくは語られていなかったけれど、今ここへきて種明かしをされる。
千代ちゃんの一番のトラウマは、自分が果たすべき女優の役割を全く果たせなかったこと。
自分の個人的な思いで演技をすることができなくなってしまったことが、何よりも辛い思い出としていつまでも心に残っていたのだ。
1年間の行方不明もその大失態を受けての事だったのだ。
一平君と灯子ちゃんの事はその次に来るべきこと。
役者としてのアイデンティティーがここまでしっかりと確立されていたとはね。
憧れの女優さんに自分もなりたくて、もらった脚本の字が読めないことに愕然とする。
その時に助けてもらったのが一平君だった。
言葉にルビを振ってもらって読めるように。
千代ちゃんにとって役者としての人生こそが彼女自身なのかも。
物語の本当に最後の方になって千代ちゃんにも守るべき本物の家族ができた。
そのことがおちょやんの物語の核心部分にもなっている。
ラジオドラマと掛け持ち
既にこの時千代ちゃんはラジオドラマで押しも押されぬ大人気女優。
タイトなスケジュールを調整して道頓堀の舞台に出演するためには相応の周りの協力も必要不可欠。
ラジオドラマの仕事をこなしつつ、道頓堀の舞台出演のために与えられた時間は5日間。
一平君のセリフの中に、契約は5日間だけとあったね。
最も演じる演目はお家はんとなおどんなので、かつて経験したことがある。
ずいぶん昔のような印象受けるけどほんの2〜3年前のことなので、いちどセリフ合わせをしてみればすぐに感覚が蘇るのでは。
彼の計らいがなかったらこの演目は存在しえなかった。
彼は先代の大山社長ともども竹井千代を高く評価していたね。
そして共通の意見として竹井千代が最も輝くのは舞台しかあらへんと。
そのことをおちょやんの物語の最後で再び証明してみせる。
物語的には、かつて辛い別れをせざるを得なかった千代ちゃんと一平君の新しい家族の仲直りを描くこともできている。
世の中では不倫騒動などマイナスのイメージで救いようがないようにも思うが、そのマイナスイメージを払拭してあまりあるほどのエピソードが最後に書き加えられるあたり、この大阪の物語の1番の値打ちがこの辺にあるのでは。
稽古場では
かつて経験した演目なのでカンが戻ってくることも早かったのでは。
一通りの稽古が終わった後、千代ちゃんからそれとなく提案がなされる。
一平 最後の方でな、こんな台詞を加えたらどないやろ?
もし、うちらが一緒だったらどんな人生になりはったんやろ
今更そないなこと言うても仕方あらへん
そうだすな、それぞれ別な人生がおますものな
こんな風なやりとりが新たに2人の相談で付け加えられることに。
実はこの2人は芝居を通しての戦友。
こうしたやりとりが、彼らのコミニケーションの全てだったのかもしれない。
夫婦としてはうまくいかなかったけれど、舞台人としてはまた元に戻ることができたと言える。
それぞれ縁があって一緒になり、そして別々の人生を歩むことになった。
そういったシリアスで重たい内容もこのドラマでは驚くほどフラットにそれでいて鮮烈に描かれる。
おかあちゃんが魔法を見せる番だす
ついに1回限りの公演が始まる。
女優竹井千代が舞台に復活した瞬間。
かつての仲間たちが大勢集結した中、今ラジオドラマで一緒に仕事をしているメンバーもこの舞台に駆けつけていた。
脚本家の長澤さん。
お父さんはお人好しを舞台化して、さらに映画化もしようと。
こうして今日の放送は無事終了したが、明日はいよいよ最終回。
浪花千栄子さんの半生を描いたドラマおちょやんがついに終了する。
私にとって、苦手だった大阪のドラマだったが、このドラマを毎日見続けることで自分の認識は大きく変わった。
どんなドラマを見るかによって印象はがらりと変わる。
少なくともおちょやんは見ごたえ抜群の素晴らしいドラマだったと改めて確認できる。