くわちゃんの独り言

音楽や映画が大好きな爺さん。長年の経験から知りえたことを発信します。

エクソシストが描く新鮮な恐怖

 

この間テレビの再放送で見たエクソシストがあまりに新鮮な驚きだったもので、改めてブログにアップすることに。

この映画は1973年度の封切りになる。

今から48年前、撮影その他を考えれば半世紀前の作品。

この頃の映画は、まだコンピューターグラフィックなど、それほど発展はしていなかったのでメイキャップと他の特殊撮影の技術を駆使して作られたものと想像するが。

私たちは、映画の中で少女に乗り映った悪魔の恐ろしさが強く記憶に残るので、あのおぞましいシーンで2時間を超える対策が埋め尽くされていると考えがちだ。

今回改めて見て感じたのは、

あのおぞましいシーンは全体の30分ちょっとしかない。

さらには肝心のエクソシストが現れて悪魔払いをするのは最後の20分ちょっとにしか相当しないのだ。

にもかかわらず映画内で語られる恐怖は新鮮そのもの。

振り返って批評するに十分な作品だと感じた。

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音楽と共にこのポスターがよみがえってくる

目次

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監督ウィリアムフリードキン

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監督ウィリアムフリードキン 撮影当時38歳

撮影当時は新進気鋭の監督だったと言える。

特にこの作品の2年ほど前に撮影した「フレンチコネクション」でアカデミー賞の監督賞も受賞。

若いながら実力を高く評価されていた。

そして期待を一身に受けつつエクソシストの撮影に臨んだ。

彼は、調べてみると典型的な昔気質の撮影にこだわりを持つ監督。

映像や俳優もさることながら、音楽に関する造詣が深く、音楽担当は気に入らなければ大御所であってもクビにする位の事は平気でやった。

フリードキンと仕事をした当時若手の作曲家たちはその後様々な作品でブレイクしているので、音楽に関する彼の選択は間違っていなかった事は確かだと言える。

彼は俳優やスタッフ等を追い込むことでも有名とされる。

気に入るまで何度でも演じさせるし、それは日本の著名な監督黒澤明や深作欣二にも通じるものがある。

実際、彼は深作欣二の大ファンだとも聞いた。

監督としては奇人変人の類に分類されているの興味深い。

女優リンダブレア

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リンダブレア 当時14歳

女優リンダブレアは1959年生まれで、撮影当時は13歳か14歳。

彼女の持ち合わせている世界観で悪魔に乗り移られた少女を演じきった。

カラコンを入れてメイクをすれば見事に悪魔の出来上がりになるが、彼女自身が感じた世界観がベースになっているので、とてもローティーンの少女が演じられるような役柄ではない。

悪魔が苦しげにうめくシーンとか、空中に浮かび上がって天井近くで表情をゆがめてそのままゆっくりとベッドに戻る様子などの表情作りは見ていても鳥肌もの。

これは、監督の演技指導の賜物だと個人的に思う。

そして、リンダブレアは10代の若い俳優にありがちな人生の挫折を経験している。

つまり、様々な誘惑にさらされたんだろうなと思う部分が。

アルコール、麻薬、セックスなど彼女は翻弄されて身を持ち崩した時期があった。

しかし、その後は見事に復活しているので、彼女の女優魂は見上げたものだと思う。

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首が真後ろを向くシーンとか口から緑色の液体を吐き出すシーンとか😨

すべては特撮で行ったようだが緑の液体はグリンピースをドロドロに溶かしたスープを口に含んでいたと聞いた。

とにかく物語の中でこの悪魔が顕現化するシーンは、およそ30分ないし40分程度で終わってしまう。

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記憶に残る衝撃のシーンだった

物語の設定が見事に組み立てられていたので、ひょっとしたらこんなことが現実にあるのではと錯覚したよね。

エクソシスト“メリン神父”を演じたマックス・フォン・シドーは当時44歳

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当時44歳 驚くほど年寄りに感じていたけどね

マックス・フォン・シドーはスウェーデン生まれの俳優で、あの有名なイングマル・ベルイマンの映画に若い頃は多数出演していた。

彼は身長190センチを超える長身で、かなり見栄えのするイケメン俳優だが。

実際のところは、ベルイマンの映画に出るほどの性格俳優なので、演技派の男優と言える。

彼は44歳の時に、老齢のメリン神父を演じた。

調べてみるとこの配役で一躍有名になったと聞いている。

ベルイマンの初期の作品によく出ていたので、私も名前だけはよく知っていたかもしれない。

エクソシストからおよそ30年経って撮影された映画にトムクルーズ主演の「マイノリティーリポート」があった。

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マイノリティーリポートでは退役軍人の役柄でかなり若々しく見えたね

もちろんメイキャップのせいもあるだろうが、30年経ったこの役柄の方がはるかに若く、さっそうと見えた。

メリン神父とこの退役した大佐が同一人物にはなかなか思いにくい。

ハリウッド映画の底力を見せつけられたと感じたね。

映画の設定を振り返る

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メリン神父と悪魔パズズとの骨肉の争い

ちなみに物語に出てくる悪魔は古代アッシリアに発生した悪魔。

悪魔自身の語った内容だと、

空気の霊の王者 パズズ とあった。

この作品は、この後続編も作られるのでそのストーリーの中でも設定は詳しく語られることになる。

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空気の霊の王者パズズの像

物語の最初の頃に設定の説明で出てきたシーン。

メリン神父はこの頃 発掘作業に従事していて、この悪魔の存在を認識している。

そしてこの悪魔が様々な人々に乗り移って悪事を働くので、その都度彼自身が悪魔払いの儀式を行っていた。

つまり、映画の中のミーガンに取り付いた悪魔払いの儀式は何度か行われた戦いの最終形にあたる。

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映画の中でも使われていたパズズの像

古代アッシリアに発生との事なのでメソポタミア文明のことだよね。

つまり、チグリス川ユーフラテス川に挟まれた領域の文明に起因

基本、砂漠の中で発生しているので、イナゴなど様々な虫に乗り移る事でも生きながらえてきたようだ。

この物語は、まだコンピューターグラフィックが映画に本格的に採用される以前の撮影になるので、様々な技術を駆使してあれだけの映像を作り上げたようだ。

しかし、物語の中で語られる様々な原因と結果は驚くほどの信憑性があって、その後のテレビで様々な特集番組が組まれたことでも記憶に残る。

特にカソリックでは悪魔払い(エクソシズム)は昔から伝わる儀式としてその作法が残っていることなども紹介されていた。

映画を見ながら、様々な設定があの当時本当に興味深くてね、2時間をはるかに超える映画だったけれど、息もつかせず一気に最後まで。

そしてわかったことが、巧みな状況説明がなされていて、その段階で既に視聴者の興味を大きく引くことに。

さらには、あの悪魔が乗り移った特撮のシーンに結びつくのだ。

50年も時間が経っていながら、新鮮な恐怖感は未だに色あせることがないと思い知らされる。