松永から持ち込まれた、思いがけない引き抜き話。
スズ子は梅丸のライバル会社日宝からの1.5倍の給料で引き抜きたいと持ちかけられる。
突然の話に困惑するスズ子だが、話の内容は決して悪いものではない。
しかし、話を進めていくにはスズ子はあまりにも世間知らずだった。
この業界の暗黙のルールで、他の会社の商品には手をつけてはいけないと言う不文律がある。
会社の商品とはすなわち人材、タレントやスタッフなどあらゆるものが含まれるだろう。
特にトップスターとなれば、なおさらの事。
会社は1番の売れ筋商品をパクられることになるので、何をさておいても防ぎたいと思う。
そして、相手の商品をパクることがどれだけ罪深いことかは業界人なら誰もが身に染みて知っていること。
ブギウギはスズ子のモデル笠置シヅ子のエピソードを忠実になぞっているように描かれている。
深刻な話もありつつと思いきや、実際は大阪風のユーモアを交えた脚色もなされていて、物語としての見ごたえは充分。
スズ子は自分が何をしようとしているのかよく理解していないまま、周りの人の意見に簡単に迎合してしまっていた。
気がついたときには大問題に発展。
反省して次に進むべき道を彼女なりに見つけることになる。
目次
業界の噂話
昨日の話では絶対秘密との事だったよね。
しかし、この業界は狭い領域で、ほとんどプライバシーなんか ないようなもの。
スズ子を取り巻く様々なご事情は至るところで筒抜けになっていたようだ。
当然仕掛けられた梅丸は黙っちゃいない。
部長の辛島が怒鳴り込んでくる。
辛島自身が大隈社長からぼろくそになされていた。
梅丸にとってスズ子は欠かすことのできない大スター。
どんな条件をつけられようか、手放すことには絶対にならない。
辛島はスズ子が所有していた日宝との契約書も発見。
このまま好き勝手させるわけにはいかない。
スズ子を軟禁して外部とのコンタクトを完全に遮断する。
確かに他には有効な手段があるとは思えなかった。
梅丸所属の立ち位置
スズ子は梅丸所属のスターになるので、他の会社で活躍することにはならない。
それはこの時代も現代でも同じことで、スターたちは所属する会社の所有物としてその範疇でしか活躍できないのだ。
普通今でもスターが事務所を辞める時は、それなりの手続きが必要とされるようだ。
芸能ニュースで発表される事務所移転の様子もあらかじめ話があってから、それぞれ折衝をして折り合いをつけて円満に片付いた場合のみきちんと発表されるような。
事務所関係のトラブルが長引くと所属しているタレントは活動することができない。
そうやって音信不通になってしまった俳優たちが多少なりともいたように記憶する。
また、マネジメントはチームワークで動くので、誰かが勝手なことを言い出すとタレントそのものが活動できなくなる場合が多いと聞いた。
才能を期待されながら1線から退いてしまった俳優女優を多数記憶する。
スズ子は辛島の剣幕に驚きながらも、とりあえずは松永に相談せねばと考えた。
しかし、会いに行くことなど許されるはずもなく。
うまい具合に理由をつけて脱走することになる。
脱走を手伝ったのが秋山。
彼女も東京に残るべきかどうか結婚を受け入れるかどうか、悩みを深めていたのだが。
今日のところはそんなエピソードは語られなかった。
スズ子はとりあえず松永に連絡を取ることができて、以前内緒話をした喫茶店で待ち合わせることに。
勘違い恋
ひょっとしたら今日1番の見所だったかもしれない。
スズ子の勘違いが現実になる。
スズ子は松永に向かって自分が恋心を抱いていること。
さらには松永自身も「I Want you」って言ったではないか。
しかし、ここは残念ながら表現方法の差で、松永には外国に既に許婚がいたようだ。
白人女性のプロフィールを見せながら、スズ子の気持ちには応えられないと。
スズ子の恋はあっけなく終了。
茨田りつ子の分析
行宛の亡くなったスズ子は所属するレコード会社に泣きつくしかなかった。
梅丸や日宝にはとても顔向けできない。
何をどうすればいいのか、レコード会社に相談しようとしたのだ。
しかし、レコード会社にとっても迷惑な話。
大声でスズ子を罵る声が聞こえたところで、井田りつ子が登場。
昨日と同様に、
下品‼️
菊池凛子の抑えた演技がとても印象的に映る。
彼女は淡谷のり子をかなり意識した演技をしているように見える。
彼女だからこそできる演技かもしれない。
淡谷のり子はもともとソプラノ歌手だったのが、別れのブルースを歌うために、一晩声を枯らして録音に臨んだそうな。
自分が目的とするための声質を得るために手段を選ばないのはこのタイプの芸術家らしく、ストイックの極み。
おそらく物語の中でこれからも同じようなエピソードが描かれ続けるに違いない。
反省
スズ子が必死に考えて得た結論ではとりあえずは梅丸に戻るしかない。
下宿に帰ってきたところが作詞家と作曲家がスズ子のために2人で楽しそうに会話しながら新曲を作っていた。
今更のようにスズ子は表現者としての自分の存在がどれほど多くの人を勇気づけているのか思い知ることになる。