いつの時代でもそうだが、プロと呼ばれる人たちの地道な努力は周りに知られる事はほぼない。
スズ子は日本を代表する歌手として、
不動の地位を築き上げていた。
昭和31年、42歳のスズ子は若い頃のようなパフォーマンスが厳しく感じられる。
そんな中思いがけず出会ったかつて憧れのスターだった大和礼子の忘形見
水城アユミ
彼女は年末の歌番組でぜひスズ子の代表曲「ラッパと娘」を歌わせてほしいと懇願。
衰えを感じ始めているスズ子にとっては、できれば逃げ出したい気持ちにも。
不思議なもので成功すればするほどその人の周りには守るべきものが増えていく。
スズ子は自分自身に常に最高のものを求める探求者でもあったはず。
モデルの笠置シズ子は40代に入ってから歌手活動をきっぱりと辞めてしまう決断をする。
いくつか本人の口で理由が語られていたが、
- 中年に入ってから自分が太り始めてしまったこと。
- さらには歌って踊るうちに息切れを感じ始めたこと。
思うようなパフォーマンスができなければ人前に立つべきではないと考えたらしい。
笠置の娘の言葉も残っている。
歌手を辞めてからの母親は家で鼻歌すら歌わなくなったと。
ブギウギのスズ子同様、思い込んだら一途だったことがよく伝わるエピソード。
ブギウギでは愛子のエピソードを絡めながら、スズ子本人は水城アユミのラッパと娘を聞いてみたい思いに駆られたと述懐。
自分の気持ちを正直に羽鳥善一に伝える。
スズ子の歌手としてのポリシーに大きくうなずく善一。
君の決断を支持する。
これで年末の歌対決は決まった。
「ラッパと娘」対「ヘイヘイブギー」
明日の放送を待つばかりとなった。
そして物語の終焉はすぐそこに。
目次
愛子の迷いはスズ子の迷い
愛子は負けるとわかっているかけっこに参加しないために学校を休もうと考えた。
スズ子は愛子の判断を尊重する姿勢。
戦う戦わないと決めるのは自分自身。
もちろん負ければ悔しいし、戦わなければよかったと思うことがあるのかも。
しかし大切なのは結果はともかく、自分がどれだけワクワクできていたか。
スズ子は愛子の勇気ある決断と行動を心から褒め讃えていた。
初めから勝ち目のない戦いに果敢にチャレンジした娘。
娘の心意気をこれほど嬉しく頼もしく思った事は今までなかったのでは?
愛子は周りから過保護と揶揄されながらも、健気で前向きな考え方を持つことや行動することができる
とても素敵な子供に成長していた。
愛子のチャレンジはすなわち自分自身に置き換えることができる。
スズ子は善一に自分の気持ちを伝えるために出かけることに。
新旧対決
TV局は自分たちの企画がどうやらやりすぎなのかもとも思っていたようだ。
しかし、大勢の注目を集めるのに十分な企画であることに間違いない。
このテレビ局は言わずと知れたNHK。
歌番組は今でも続く紅白歌合戦。
しかし、どうやら本番対決まで、あとわずかとなったようだ。
スズ子は自分にとっても最も大切な曲をアユミがどんな風に歌うのか聞いてみたくて仕方がない。
歌手としてのスズ子はまず自分がワクワクすることが出発点なのだと改めて確認。
どうやら思い通りの舞台が出来上がる。
善一と麻里
善一にとってスズ子は特別。
彼女がいたから、様々なブギウギが作曲された。
福来スズ子の楽曲は善一とスズ子の共同作品。
大切な曲目を全く別な人が歌う。
確かに大いに興味が湧くところだが、別な意味で比較されれば優劣をつけられる事は目に見えている。
自分の分身とも言える曲をどんなふうに扱えばいいのか思案は尽きない。
しかしこのような芸術作品にとって、大勢の人に様々な条件で鑑賞してもらうのはむしろ望むところではなかろうか。
スズ子のパフォーマンスしか知らない一般の人たちが、別人が歌うことでどのように感じるのか。
そのことを考えれば、善一もスズ子同様ワクワクして興奮を抑え切れない。
いつの時代も芸術家の立ち位置は作品と同様、デリケートで驚くほど繊細。
歌手福来スズ子のポリシー
ブギウギの歌手として、スズ子は自分がワクワクしなければならないと考えている。
逃げたり隠れたりは、自分の本分ではない。
スズ子は自らの決断で、アユミに「ラッパと娘」を歌うことを許可。
本当は恐れている新旧対決の結果。
スズ子は自分自身のパフォーマンスの限界に気がついていた。
アユミは20歳前の元気いっぱいな娘。
対するスズ子は42歳。
もし、運動競技なら明らかにスズ子が不利。
しかし、歌合戦は運動競技のように見えて、実際は芸術を披露し合うこと。
気持ちは、少なくとも演じる側だけに存在するわけではない。
結果はともかく、同じステージでそれぞれが思うところの楽曲を披露してみる。
スズ子の歌手としてのポリシーは勝ち負けはあまり関係ないようだ。
明日の放送で時間をかけてアユミとスズ子のステージが描かれるはず。
歌手福来スズ子の最後の舞台になる可能性も。