くわちゃんの独り言

音楽や映画が大好きな爺さん。長年の経験から知りえたことを発信します。

アランドロンとジャンギャバンの思い出 暗黒街のふたり

 

かなり古い世代の人たちでなければ、この映画を見たことある人は少ないと思う。

フランスを代表するジャンギャバンと30そこそこのアランドロンが共演した傑作。

もちろん私も映画館でこの映画を見たわけではない。

テレビの深夜放送か何かで見た記憶が。

今ならほとんど採用されることのない重いテーマを扱った作品。

犯罪を犯した者が果たして更生できるのかどうかを題材にしている

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ジャンギャバンがずいぶん老けて見えるがこれで60代後半

目次

犯罪者の更生と保護司

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12年服役して釈放されたがきちんと保護司について生活を

アランドロンが演じたジノは銀行強盗で捕まって12年間服役

その首謀者とのことで、きっちりと刑を受けた。

さて出所してからも、生活は厳しく制限される。

昔見た映画なので記憶もおぼろげだが、確か大都会に住んではいけない設定になっていたと思う。

これは今で言うところの所払いのようなもの。

と同時に決められた時間までに必ずしかるべき場所に出頭して、自分の所在を明らかにしなければならない。

実は、こういったやりとりがかなり大変な作業になっていて、前科を犯した者が更生できるかどうかはこの手続きの中から決まってくると言っても良いのだ。

ジノにあてがわれた保護司はジャンギャバン扮するジェルマン

彼が骨を折ってくれたおかげでジノは娑婆でもきちんとした生活を送れるようになったと記憶。

ジノは結婚していて、印刷工として仕事もするようになってジェルマンの家族とも家族ぐるみの付き合いをするように。

しかし、そんな時にジノは交通事故に巻き込まれて奥さんを失ってしまう。

アランドロンのこうした演技を見ていて、真面目に頑張ろうとするんだけれど歯車がどうしてもうまく噛み合わなくて世の中のレールから外れていってしまう、そういった脱落者を演じさせると彼はピカイチだなと感じたもの。

若い頃の三船敏郎も同じような役どころで実力者であることを感じさせた。

やがてジノは働き始めた印刷所で恋人と巡り会うように。

この恋人を演じていたのがミムジーファーマー

ちなみにこの映画はフランスの俳優を使っているが監督はイタリア人でイタリア映画の分類になる。

ミムジーはハリウッド女優なので、アメリカ出身。

映画で描かれた場所はフランスだが、スタッフその他を見ると国際色豊か。

この物語は、必死に更生しようとして努力し続ける若者が、まるで理解のない周りの勢力に屈して、結局世の中から脱落していく、そんな様子を描いている

驚くほどの不運と不幸。

しかし、ジノの真面目さと気立ての良さに免じて何とか力になろうとするジェルマン。

そういった2人の努力が描かれるのだが、事態は残念な方へとひたすら向かう。

冷酷非情な運命

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ミムジーファーマー 彼女をも巻き込んだ事件に

ジノにはかつて銀行強盗をした仲間がいた。

そして運の悪いことにその仲間たちに再び悪事に誘われてしまうのだ。

きっぱりと断るジノ。

しかし、運の悪さはそれだけでは済まなかった。

ジノを逮捕した警部がふとしたきっかけで出所したジノをメザとく発見。

再び悪事を働くものと決めつけてかかる

そして何かにつけていちゃもんをつけケチをつけてジノに付き纏うのだ。

そしてある時、ジノの彼女に詰め寄ってジノが犯罪を企てているのではないかと詰問をする。

本当の不幸はここからだが、

激昂したジノはこの警部を首を絞めて殺してしまう

そのまま捕まってしまったジノは裁判にかけられたのだが、陪審員を始め全員の意見が死刑を求めていた。

どんなに頑張って弁護をしても、嘆願書を出してみても全く届かず。

死刑が確定して結局執行されてしまう。

この1連の流れが淡々とストーリーとして語られるのだ。

テレビのような小さな画面で見ていても切なく苦しいシーンが連続する。

そしてアランドロン扮するジノは結局運命に抗えずに命を落とすしかないのだ。

フランスの死刑制度

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死刑に処せられる直前の映像

このときのフランスの死刑制度はまだギロチンを採用していた。

どういったことが行われるかは見ればすぐにわかる。

フランスはあのフランス革命の時に恐怖政治を始め様々な悪政時代があった。

国王や王妃すらもギロチンで処刑される国。

ギロチンで処刑されるシーンが映画の中では淡々と描かれる

自分の身に何が起こっているのかをうつろな様子であまり理解できていなさそうなジノ。

そして死刑執行の時に立ち会っていたジェルマンの方を思わず振り向く

このときのシーンの切ないこと。

こんなに残酷で冷酷な物語は他にちょっとないくらいの印象を受ける。

そして死刑に処されるジノを演じたアランドロンの役者としての底力をまざまざと感じる。

まとめ

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フランスでは最近になるまで死刑の方法はギロチン

テレビで見た映画ながら記憶の中にくっきりと残っている私的には問題作。

この映画の封切りの後、

ジャンギャバンは3年後の1976年に亡くなっているのだ。

享年72歳。心臓発作と聞いている。

名優たちが演技で互角に渡りあった記憶に残る映画。

今思い出してみてもこういった内容の映画はテーマがかなり重いので最近の様子ではなかなか作られないのではと。

しかしハリウッドでリメイクされて上映されていた。

フォレストウィティカー主演で贖罪の街として2014年封切り。

この手の映画はほとんど売れないと見た方が良いので、それでも映画人ならどうしてもたいテーマになるのだろう。

そして映画を趣味にあちこち覗いてみる者にとっては、このタイプの映画は素通りできない。

実は、今日仕事をしている最中にたまたま仕事場で見かけた保護司の上りに記憶をたぐったところ、この映画が浮かび上がってきたのだ。

チャンスを見てもう一度見てみたい。