思った通り寿恵子の持ち味の真骨頂が発揮される。
槙野家を訪ねてきたのは、やはり思ったとおり借金取り。
彼は磯部と言って万太郎相手に200円を貸し出ししているようだ。
この物語が面白いなと思う点は、借金を作ったのは間違いなく万太郎だが、後始末は全て寿恵子が担当している。
おそらく、お金を借りる時も寿恵子の入れ知恵で借りたのではなかろうかと推察。
ユニークなのは、借金取りが家にやってきたときは寿恵子だけが対応して、万太郎は決して顔を出してはいけないルール。
そして、寿恵子が対応している最中は、赤い小旗が入り口に建てられていて、決して近寄ってはならないと言う。
そこまでしなくてもと思うけど、この当時の200円は今のお金に換算すれば、ざっと400万円ほどの価値があるような。
はっきり言ってかなりの大金。
最近の話題で言うなら、サラ金で複数借りればそれぐらいの借金はすぐにできると思う。
ただし、返済もそれなりに大変になるだろう。
現在は年率が厳格に決められるので、法外な返済にはならないが、返済の遅延は何があっても嫌われる。
借金は作ってしまえば返すしかないので。
ネットのニュースなどで返さなくてもいいようなニュースが盛んに載っていたりするが、基本的には借りたものは返すのが当たり前だと。
さて、世の中の雲行きも少しずつ変化しつつある。
目次
借金取り 磯部
今日の物語の見所はなんといっても寿恵子と磯部のやりとり。
磯部は万太郎を呼び出して借金返済の道筋を立てなければならない。
既に返済期日は大幅に超過しているような様子。
磯部は万太郎に話をしなければと思いつつ、寿恵子の巧みな誘導で寿恵子とやりとりを開始してしまう。
寿恵子は白浪5人男さながらに、大見得を切って万太郎を持ち上げる。
彼がどれだけ世の中のために学術的な大切な仕事をしているのか。
何よりも槙野万太郎は、世界に名だたる植物学者。
彼の書籍は誰もがその価値を認める学術書。
これから様々な教育現場で絶対に必要になるものだと力説。
最初印刷所の中を見回して印刷機などを振り払うように迫っていた磯部だが、寿恵子の口車にまんまと載せられてられてしまう。
寿恵子は物語の中でも描かれていたが、磯部に襲われそうにまでなっていた。
しかし、もともと客商売をしていた彼女にとっては、絡んでくるお客をあしらうのは得意な分野だったのかも。
そればかりか、何よりもすごかったのは、借金の返済を先延ばししただけでなく、新たにもう200円出資させた。
そして、万太郎の植物志をしっかり買わされていたね。
どうやら、万太郎と寿恵子の間の話し合いでお金に関する事は全て寿恵子が担当すると取り決めがなされているようだ。
面白かったのは、寿恵子が磯部と渡り合っている間、子供たちが印刷所の角でおとなしく待っていたこと。
万太郎がこそこそと隠れていたこと。
物語は、ユーモアたっぷりの見せ場が。
こそこそ隠れる万太郎
万太郎に借金があることをうすうす感じ始めた藤丸と羽多野。
しかし、全体としてどれぐらいの金額になるかははっきり言って万太郎自身も気がついていない可能性が。
お金に関しては昔も今も無頓着なまま。
お金持ちになるためには、良い金運を持っていることと、それなりにお金に執着する気持ちが必要だと思う。
ずぼらで能天気な感覚ではお金と縁はできない気がする。
寿恵子の大見栄
磯部に言い寄られて、かなりきわどい場面もあった。
しかし寿恵子はこれは自分の役目だとしっかり理解しているようだ。
ピンチをチャンスに変える、そのひたむきさは万太郎も見習うべき点かもしれない。
万太郎をしっかり持ち上げつつ、彼の値打ちを理解させたところで、さらなる出資を勝ち取るなど、普通はありえない。
実はモデルとなった牧野博士の奥様寿衛さんも寿恵子以上に借金取りの対応をしていたようだ。
牧野富太郎博士は、植物学者として世界的な有名人だが1連の研究生活は寿衛さんとの共同作業だったかもしれない。
馬琴を引き合いに出していた寿恵子。
これ以上の儲け話はないと磯部を御言葉巧みに丸め込んでいた。
思いがけない事実
物語の中で、この当時の事件として紹介されていた。
森有礼の暗殺事件
この事実を物語の中で語っていたのがいつも行く質屋の中尾。
物語の中でさらりと語られていたが、設定は明治22年の2月。
万太郎は28歳になっていると思われる。
寿恵子が3歳年下で25歳と言うことに。
実際は、牧野博士の11歳年下だった寿衛さん。
さて、物語のこれからはあのブラック田邊にも何か起こりそうな予感。