物語の設定は昭和14年9月とあった。
この2年後に太平洋戦争が始まる。
既に中国では様々な戦線が展開していて、日本は事実上戦時下にあった。
物語はこれからやってくる厳しい時代を無視して進むわけにはいかない。
東京で大成功を収めたスズ子は、新しくやってきた演出家林から仕控えめなステージをするように勧告を受ける。
今までと同じように歌って踊る楽しいジャズテイストの舞台はどうやら難しくなっている様子。
何よりも音楽担当の羽鳥善一には受け入れがたい要求だったように描かれた。
あらゆるものから逃げられなくなってきた日本。
物語のモデル笠置シヅ子も同じような経験をしたのだと思うと胸が痛む。
先週後半で紹介した笠置シヅ子の圧倒的なパフォーマンスは、今でも他の追随を許さないほどの説得力。
物語で描かれたエピソードでは、スズ子の生活の様子。
さらにはスズ子以上に厳しい制約のもと活動をせよとの命令に憤まんやる方ない作曲家、羽鳥と彼の妻との出会い、さらにはスズ子の弟についにやってきた赤紙にまつわる物語が詳しく語られることになった。
弟六郎が赤紙に無邪気に喜ぶ様子は、とてもじゃないが笑顔で受け入れることにはならない。
いずれ笠置シヅ子の弟についても詳しく調べねばと思ってしまう。
目次
梅丸楽劇団
主にジャズテイストの舞台で大成功を収めていた梅丸楽劇団は、新しい演出家を迎えて出し物の大幅な味付け変更が求められた。
言われてみれば、ラッパと娘やセンチメンタルダイナは明らかにジャズテイストの楽しい出し物。
今までと同様のステージでは明らかに当時の世相には向かないかも。
演出家は極力控えめを心がけることで、世相を乗り切ろうと考えたようだ。
先週この3人が登場したシーンは、どの場面もユーモアに溢れていて見所満載。
しかし、さすがに今週は同じようなことにはならなさそう。
時代背景
昭和14年はドイツがポーランドに侵攻して第二次世界大戦が勃発。
日本は中国でシナ事変の継続がそのまま続いていた。
日本のこの時の中国での振る舞いがアメリカの逆鱗に触れることになる。
アメリカはこの直後、日本への石油輸出禁止令を発動。
日本は何とかして打開策を模索したが、当時のアメリカ大統領ルーズベルトは日本に対して
聞く耳持たずの姿勢を決して変えようとしなかった。
太平洋戦争はちょうどこの2年後に勃発することになるが、日本はギリギリまで話し合いによる決着を模索していたようだ。
この頃、日本政府の中で中心的な役割を押し付けられていたのが有名な東條英機。
彼があたかものし上がっていったような認識も世の中には出回っているようだが、私はそうは思わない。
実務能力に長けた彼は日本政府の中でも引っ張りだこだったと聞いている。
そして彼はそのまま責任の全てを負い込む形で東京裁判で死刑を執行される。
このときの中国戦線では、およそ70万人が命を落としている。
東條英機はある意味その責任を自ら取ったのかもしれない。
ブギウギの描く時代は、まさにこの頃の舞台芸術について。
物語の今後が大いに気になるところ。
スズ子と善一夫婦
善一はスズ子以上にストレスを感じていたのかもしれない。
自分がやりたいと思ったことをがんじがらめに制限されてしまう。
家に帰ればウサも晴らしたくなるだろう。
時代背景が彼らの舞台芸術を異端とみなしたのはやむを得ないこと。
家に帰ってから家族に憂さ晴らしをする善一。
スズ子はそんな夫婦の様子を困惑気味に見つめるばかり。
今日紹介されていた羽鳥と彼の妻麻里との出会いのエピソード。
どうやら彼らがいつも利用する喫茶店での出会いだったようだ。
羽鳥を好意的に感じていた麻里とは裏腹に、スズ子は羽鳥を変態扱い。
男女の中は当事者2人にしかわからないことだらけだが、典型的なエピソードだろう。
『蓼食う虫も好きずき』とはよく言ったもので、モデルの服部良一も同じような出会いだったのかもしれない。
六郎への招集令状
この時代は、こういった招集令状が一般市民に届けられた。
これは絶対に逆らえない命令なので、私の聞いた話ではこの時代年頃の男たちは皆ビクビクしながら暮らしていたらしい。
もし、戦地に送られれば命の保証は無い。
そのことをよく理解してるが故に、誰もが不安な日々を送った。
スズ子の大阪の実家では母ツヤはかなり厳しい病状が懸念された。
神妙な顔で熱々先生の診察を見守る梅吉。
しかし、どうやら深刻な様子で専門医の治療を受ける必要がありそう。
笠置シズ子の育ての母親も実際は早くに亡くなってしまう。
この物語の描く通りのことが実際に起こっていたようだ。
何よりもびっくりするのは、母親の深刻な病状を知らされた笠置は親の死に目に合うことができなかった。
笠置が実家に帰ったのは母親の四十九日の時だったと聞く。
ブギウギは史実を忠実になぞることで深刻な物語が繰り広げられる。