くわちゃんの独り言

音楽や映画が大好きな爺さん。長年の経験から知りえたことを発信します。

ブギウギ 忍び寄る敗戦 それぞれ

物語は昭和20年初期の頃を描いていると思われる。

この年の8月に二発の原爆が落ちて、日本は敗戦に至ることになる。

戦争末期の頃のご時世と合わせて、日本や諸外国でがんばっていた日本人がどのような境遇に置かれ、どんな感じ方をしていたのかが詳しく描かれることになった。

物語の最初と終わりに登場してきたのは羽鳥善一。

彼は上海で音楽イベントの責任者として重大な仕事を任されていた。

軍からの命令だったが、羽鳥はそんなことをお構いなく適性音楽とされたジャズを勇敢にも取り入れた音楽会を催した。

15分の物語の中では、さすがにその時の様子までは描かれなかったが、終わった後大成功とのことで羽鳥の考えは周りみんなから支持されたことになる。

彼が語った

音楽がその時のご時世に左右されるなんて事はあってはならない。

音楽は自由だ。

とりも直さずモデルとなった服部良一その人の言葉だと言える。

15分のストーリーの中では、茨田りつ子も登場。

彼女のモデルは言わずと知れた淡谷のり子。

淡谷がかつて自分の生い立ちの中で語ったエピソードがそのまま用いられていると思った。

彼女は特攻隊員のリクエストに答える形で歌っている。

その時初めてステージでボロボロに泣いてしまったことを告白。

今日はその引き金となるエピソードが語られることになる。

そしてスズ子は富山での公演の最中にとある親子に出会うことになる。

女の子を連れた母親は夫を戦争で失ったと語っていた。

スズ子が素朴な質問として

この戦争勝てるやろか?

絶対に勝ちます。

そうでなければ、夫は犬死に。

このやり取りの中にこの物語がどうしても語らなければならないこの時代の人たちの本質が語られていたと思う。

驚くほどの閉塞感。

先週からの流れを受けて、物語はいよいよ過酷な現実を描き出す。

富山の旅館でのひとこま

目次

羽鳥善一 上海にて

大成功の音楽会を振り返る

羽鳥善一が依頼された音楽会は、中国の日本統治が正当なものでしっかりと実行されていることを証明するためのもの。

そのようなアピールが必要なほど、日本軍も後ろめたい気持ちがあったに違いない。

日本を鼓舞するための音楽会を催してほしい。

この時、やり方は羽鳥善一に一任された。

善一が考えたのは、中国人作曲家の作った曲を日本人の手によってジャズ風にアレンジすること。

少なくともそれは適性音楽をためらいもなく奏でることになる。

本来ならばタダで済まないところだが、音楽会は大成功とのナレーションが。

この時李香蘭が歌った曲が物語の中で披露されていた。

ジャズテイストの曲だけど決して浮かれ騒ぐような曲調ではない。

服部良一が自分の作品の中で1番好きだと語っていた作品

茨田りつ子のポリシー

軍歌は性に合いません

モデルとなった淡谷のり子はかつて特攻隊員を前にしてステージに立ったことがあると語っていた。

歌っている最中にもし命令が下れば途中で退席して、隊員は出撃することになる。

そしてそれは二度と帰ってくることのない戦い。

その事実を知らされた上で淡谷は歌わされたと聞いている。

歌手としてしっかりしたポリシーのもと活動を続けていた淡谷だったが、さすがにこの時ばかりは泣けて仕方がなかったと述懐。

物語のエピソードはそういったことを描いているはず。

スズ子と親子

夫を誇りに思います 戦争に負けたら夫は犬死にです

スズ子が富山で出会った親子は夫を戦争で失った母親と娘。

南方戦線で戦って戦死したと語っていた。

母親のセリフが物語を見ているものの胸に突き刺さる。

日本のために立派に戦って死んだ。

夫を誇りに思う。

悲しくもなんともない。

夫を亡くした悲しみを無理矢理乗り越えようとする残された妻の思い。

もし戦争に負けるなら夫は犬死にすることになる。

言葉だけを聞くならば、切ないと思う以外に何もないが、この当時家族を失った多数の日本人が何を頼りに生きてきたのかを思うと、戦争の冷酷さが改めて思い知らされる。

既にこの頃から70年以上が経とうとしている今、世界の情勢は戦争からいささかも遠ざかることができていない。

今でも大勢の人が戦禍にさらされ、恐怖に怯えながら日々暮らす。

残念ながら人間は歴史からほぼ何も学んでいない。

音楽は自由

音楽は、いかなる束縛も受けない(きっぱり)

いつもはひょうひょうとした演技をしている草彅剛が自分の気持ちを熱く語った瞬間。

音楽がその当時のご時世に左右されるなんてそんなバカなことがあってたまるか。

芸術が他からいささかの干渉も受けずに自由な存在であることを声高らかに宣言。

善一は自ら編曲した「夜来香ラプソディ」を李香蘭に歌わせていた。

物語はいよいよ太平洋戦争終結の時が近い。