渋沢栄一が本領を発揮し始めて、様々な事業を起こした事は今では誰もが知るところ。
青天を衝けで描かれる明治政府が始まった頃。
歴史的に見ても、あれほどの大変革が短期間で成し遂げられたことには、超人的な活躍をした人たちがいることを忘れてはならない。
ともすれば歴史の結果しか伝わらないことは未来を築く上では大いに不満が残る。
物語の中では、銀行設立に向けて渋沢栄一が奮闘努力することが描かれた。
そして、今回のドラマの中で私がどうしても高く評価したい点は、最初の頃に描かれるお妾さんとのやりとり。
英雄色を好むではないが、渋沢栄一の女癖の悪さは今でも伝わっている動かしがたい事実。
いろいろ調べてみても何人子供がいるのか正確な数字さえ把握できていないようだが、50人以上は間違いなくいるとの見解がどうやら最も信憑性がありそう。
しかし、そういった素行の悪さとは裏腹に、日本の国の発展のために果たした役割はとてつもなく大きい。
この物語がどれほど誠実に人物像を描けているのか興味は尽きないが、どうやら期待は裏切られてはいない。
目次
妻 千代 と妾 くに
普通なら修羅場とも言うべきシーン。
しかしここでのお千代さんの対応は本当に神対応。
声を荒立てることもなく、平謝りに謝る栄一とくにに諭すように話すのだ。
あなたのお子でしょ😌
みんなで仲良く暮らしましょう。
ここに登場する人たちの胸の内は、最も理想的な形をとっているが、しかし“そうですか”とはとても言えないよね。
しかし、どこぞの国のハーレムじゃあるまいし、本妻さんとお妾さんが一緒に暮らす家ってどうなんだろうって信じられない気持ちになる。
お千代さんの本心がこのシーンの直後に描かれていた。
ため息をついていたよね。
夫は仕事ができるし頭もよく切れる。
しかし、残念ながら女癖が悪い。
止めてと言ったところで止められないだろう。
おそらくそういったことを瞬時に悟ったに違いないのだ。
登場人物たちの偽らざる気持ちをどれだけリアルに描けるかがドラマの値打ちを決めると思うので、このシーンを見て大いに納得させられた。
大隈重信とのやりとり
当時の大蔵省はお金の出し入れを一手に握っていたので、他の省庁に対してかなり権限があったのは間違いない。
大隈重信も様々な省庁とのやり取りで、折衝に当たることが重要な任務だったろうと思う。
ある意味、お金の分取り合いなのだ。
その基本姿勢は今でも変わらないと私は思っている。
支出をなんとしても減らしたい財務省と、自分たちの予算を何が何でも獲得したい各省庁。
そのやりとりは、表立ってニュースになることはないが、かなり熾烈なものだと想像する。
この頃からそんなやりとりが始まっていたのだ。
ちなみに渋沢栄一や西郷隆盛はそんな様子に辟易していたと見える。
栄一の苦悩
渋沢栄一は大蔵省で仕事をしつつ、自分の振る舞いについて納得できないものを感じていた。
話し合いをしようにも、皆自分の利益ばかりを求めてくる。
そこを乗り越えて前へ進むためには、強権発動が最後に残された手段。
それははるか昔自分が百姓だった頃、感じていたことと同じシチュエーション。
上から目線で命令してくるお役人。
フタを開けてみれば、自分がその“上から目線のお役人”になっていたことが居心地が悪くて仕方がない。
時代の流れの中で、役人として仕事をせざるを得なかった栄一は徐々にストレスをためることになる。
物語がこのようにして役人として振る舞う栄一を淡々と描いているが、その横でじっと彼の仕事ぶりを眺めている喜作がいる。
自分のいとこがどんなふうに活躍しているのかをまじまじと見るのだが、一体何を感じているのか。
かつては尊王攘夷で情熱をたぎらせた2人。
その何年か後の未来がこんな正反対な形で現れるなどとはね。
富岡製糸工場
富岡製糸工場は世界遺産に認定されている。
近代日本の発展においては決して外すことのできない重要なアイテムだっただろう。
ここで行われたのは全国で活躍できる工女のインストラクターを養成すること。
そのために、ここで仕事を任された尾高惇忠は自分の娘をヘッドハンティング。
彼女の献身的な働きもあって、工場は軌道に乗ることになる。
初代の責任者になった尾高惇忠について調べてみてわかったことがある。
彼の子孫に私もよく知る著名人がいた。
それは指揮者の尾高忠明さん
実はわざわざこの方を登場させたのには訳があって、渋沢栄一の妾 くにさんには娘が生まれているが、その娘さんが確かおばあさんにあたるはず。
実は尾高家と渋沢家はずいぶん昔から婚姻関係を通じて親戚に相当する。
数少ない例だと思う。
銀行設立に腐心
渋沢栄一は自分自身の働き方には満足していなかったようだ。
彼は役人として振る舞うことがどうしても辛抱できなかった。
特に大蔵省内部は人との関係が複雑で、思い通りのこともままならない。
渋沢栄一の最もやりたい事は民間で活躍すること。
彼自身が1民間人との認識が強かったと。
明治政府内部のまとまりのなさを西郷隆盛も憂いていた。
彼はやがて西南の役を起こして非業の死を遂げることになる。
今日の物語の中でそんなことにつながるのではなかろうかと思うエピソードが描かれていた。
彼らにしてみれば大政奉還に至る直前の数年間こそがワクワクするような感動に包まれた貴重な時間だったに違いない。
今同じ境遇で政府内にいる2人は、かつての昔話で秘密を暴露し合う。
渋沢栄一はこの後銀行設立に腐心することになる。


この辺の建物も三井財閥で築いていたとはね。
しかし、こうやって次々と新しい事業を起こせば敵もいっぱいいただろうなと勝手に想像。
来週から物語はさらに進んで、銀行設立と民間で活躍する栄一が描かれるようだ。